3Dプリントの造形時間を短縮する5つの手法とコスト最適化
最終更新日:2026/7/17
本記事の要点
3Dプリンターの製作時間は実際の造形時間だけでなく、ノズルの加熱といった準備工程や、サポート材除去・二次硬化などの後処理工程も含まれ、これらが加工コストに直接影響する。
造形時間を短縮するためには、内部構造を格子状にして充填率を下げるや、造形物の高さを抑えるように造形方向を変更するアプローチが有効である。
積層ピッチやノズル径の拡大、ヘッド移動速度の向上などの設定変更も時間短縮に寄与するが、精度低下や強度不足といったトレードオフが生じるため、用途に応じた調整が不可欠である。
3Dプリントは切削加工と比較してスピーディな立ち上げが可能ですが、急ぎの試作やコストダウンが求められる場面では、「いかにして造形時間をさらに短縮するか」が設計・開発者にとって重要な課題となります。さらに、加工費は製作時間に基づいて算出されるため、造形時間の短縮は直接的なコストダウンにも繋がります。
本記事では、部品加工の最前線で培った知見に基づき、3Dプリンターの製作時間に含まれる工程の内訳と、造形時間を劇的に短縮・効率化するための5つの実践的な手法について解説します。
3Dプリントの製作時間に含まれる工程
3Dプリントの製作時間=造形物の形が出来上がるまでの時間、と認識されがちですが、実際には準備工程と後処理工程が含まれます。コストや納期を正確に見積もるためには、これらの全体像を把握する必要があります。
FDM方式(熱溶解積層方式)の工程
FDM方式では、状況によっては造形開始までに1時間近くかかり、後処理に1日以上を要するケースもあります。
準備工程: ノズルと造形テーブルのクリアランス調整や水平出しを行います。また、フィラメントを溶かすためノズルを高温(200℃前後)に加熱し、前回使用した古い材料を排出するパージと呼ばれる作業が必要です。
後処理工程: 造形後はサポート材の除去を行います。本体と同じ材質のサポート材であれば手や工具で物理的に除去しますが、複雑な形状で水溶性サポート材(アルカリ性水溶液などで溶解させるタイプ)を使用した場合、溶解から洗浄・乾燥までに1日以上の時間が必要になることがあります。
光造形方式の工程
液体レジンに紫外線を照射して硬化させる光造形方式でも、特有の準備と後処理が存在します。
準備工程: プラットフォームやレジンタンクの設置確認後、光重合反応を促進させるためにレジンを最適な温度(20℃程度)に加熱します。また、タンク内に硬化物の残留がないかのチェックも行われます。
後処理工程: 造形物の表面に残った未硬化レジンをアルコール等で洗浄(5〜20分程度)した後、内部まで完全に硬化させ強度を上げるための二次硬化(UV照射)を行います。二次硬化は材質や形状により、5分から最長4時間ほどかかります。その後、サポート材を除去し、発生したバリを研磨する仕上げ工程が発生します。
造形時間を短縮する5つの工夫
機械的な準備や後処理の時間をゼロにすることは困難ですが、造形時間そのものは、スライサーソフト(3Dデータから造形用プログラムを作成するソフト)での設定や、3Dデータ自体の設計を工夫することで大幅に短縮可能です。
内部の充填率(インフィル)を下げる
造形物の内部密度のことを充填率と呼びます。通常、内部まで完全に樹脂が詰まったソリッド構造(充填率100%)で造形しますが、これを網目状や格子状の隙間を作るスパース構造に変更することで、材料の消費量と造形時間を大幅に削減できます。

【注意点】 充填率を下げすぎると強度が低下するため、強度が必要な部品では六角形の格子状にする「ハニカム構造」を採用するなどのバランス調整が求められます。
造形方向(オリエンテーション)を変える
3Dプリンターは下から上へ層を積み重ねていくため、Z軸(高さ)が高いほど積層数が増え、時間がかかります。縦に細長い形状であれば、寝かせて水平方向に造形することで層の数を減らし、造形を高速化できます。
【注意点】 造形方向を変えると、サポート材が付着する面や、積層方向に対する強度の掛かり方(異方性)が変化するため、機能要件を満たすか事前の検証が必要です。
積層ピッチを大きくする
一層あたりの厚みである積層ピッチを大きく設定することで、全体の層の数が減り、造形時間が短縮されます。
【注意点】 層が厚くなる分、表面に階段状の段差(積層痕)が目立ちやすくなり、外観の精度や寸法精度が低下します。寸法公差が厳しい部品には不向きです。
ノズル径を大きくする(FDM方式)
積層ピッチが縦方向のアプローチであるなら、ノズル径の拡大は横方向からのアプローチです。より太いノズルを使用して一度に押し出す樹脂の量を増やすことで、造形スピードを向上させます。
【注意点】 細かい形状の再現性が低くなり、外観精度が落ちます。また、ノズル交換に対応している機種でのみ可能な手法です。
ノズルヘッドの移動スピードを速くする
スライサーソフトの設定で、樹脂を吐出するヘッドの移動速度を物理的に速くします。
【注意点】 スピードを上げすぎると、吐出された樹脂が下の層に定着する前に冷却・収縮してしまい、反りの発生や層間剥離による強度低下のリスクが高まります。
DfAMで実現する効率化
これまで挙げた充填率の調整や造形方向の最適化など、3Dプリンターの特性を前提とした設計手法をDfAM(Design for Additive Manufacturing)と呼びます。切削加工向けの設計図面をそのまま3Dプリンターで出力するのではなく、DfAMの視点を取り入れて設計の初期段階から形状や構造を最適化することが、品質を担保しつつ造形時間を短縮(=コストダウン)するための最大の鍵となります。
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