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ABSの3Dプリント | 標準・ESD・生体適合グレード選定ガイド

ABSの3Dプリント | 標準・ESD・生体適合グレード選定ガイド

最終更新日:2026/7/21

本記事の要点

  1. ABSを用いた3Dプリント(FDM方式)は、試作から最終製品まで幅広く利用可能であり、優れた後加工性と耐久性を持つ。

  2. 用途に応じて、汎用グレードに加え、電子部品製造に適した静電気拡散性(ESD)グレードや、医療・食品向けの生体適合性グレードを選択できる。

  3. FDM方式特有の積層方向による強度の異方性や、熱収縮による反りのリスクが存在するため、設計時には造形方向や環境温度の考慮が不可欠である。


3DプリントにおけるABSとは

ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)は、機械的強度、耐衝撃性、加工性のバランスに優れた代表的なエンジニアリングプラスチックです。3Dプリント(特にFDM:熱溶解積層方式)においても最も普及している材質の一つであり、形状や勘合確認のための試作品から、治具、外装・筐体まで幅広く活用されています。

切削や研磨、塗装、インサートナットの圧入といった後加工が容易な点も大きなメリットです。酸やアルカリには強い反面、有機溶剤には弱い性質がありますが、その特性を活かして接着加工を行うことも可能です。

用途で選ぶABSの3つのグレード

3Dプリント用のABSには、標準的な汎用グレード以外にも、特殊な要件を満たす高機能グレードが存在します。用途に合わせて最適な材質を選定してください。

グレード

特徴

主な用途

カラー展開

汎用ABS

最も一般的でコストパフォーマンスと加工性に優れる。カラーバリエーションが豊富。

試作品、玩具、各種外装・筐体

薄橙、黒、白、赤、青、緑、黄、オレンジ、グレー

ABS-ESD7

静電気拡散特性を持ち、静電気の発生を抑える。粉末・粉塵が舞う環境下にも適応。

電子部品ケース、電子部品製造過程の治具・工具

ブラック

ABS-M30i

生体適合性(ISO10993、USP ClassⅥ認定)を持つ。ガンマ線やEtO滅菌処理が可能。

医療ツール、固定具、食品生産部品

アイボリー

汎用ABS

工業製品で最も汎用的なエンジニアリングプラスチックです。耐久性と加工性に優れており、カラーバリエーションも豊富なため、試作から量産部品まで幅広い用途で採用されています。

ABS-ESD7(静電気拡散特性)

ベースとなるABSに静電気拡散特性をもたせた材質です。静電気による電子部品の破壊や、ホコリの吸着を防ぐことができるため、クリーンルーム内での治具や、デリケートな電子機器のハウジングに最適です。

ABS-M30i(生体適合のABS)

皮膚や食品、医薬品に接触する製品に安全に使用できる生体適合グレードです。滅菌処理に耐えうる特性を持つため、医療、製薬、食品包装業界のツールやモデル製作において非常に信頼性の高い選択肢となります。

ABS材質選定上の注意点

ABSは優れた材料ですが、FDM方式で出力する際には特有のネガティブ要素が存在します。設計・開発の現場で直面しやすい課題と、その解決策を解説します。

熱収縮による反りと寸法精度の低下

ABSは熱膨張係数が比較的高く、造形中の冷却過程で急激な収縮が起こりやすい材質です。特に大型の部品や底面積が広い部品では、収縮応力によってプラットフォームから剥がれたり、部品全体が大きく反ってしまうリスクがあります。

解決策: チャンバー(造形庫)内を高温に保てる産業用3Dプリンターを使用することで、急激な温度変化を防ぎ反りを最小限に抑えられます。設計段階では、角部にR(丸み)をつけたり、肉厚を極力均一にする(ヒケや応力集中を防ぐ)工夫が有効です。

FDM方式特有の異方性(Z軸方向の強度低下)

FDM方式は溶かした樹脂を層状に積み上げていくため、層と層の結合面(Z軸方向)は、ノズルの移動方向(XY軸方向)に比べて機械的強度が著しく低下します。

解決策: 最も大きな荷重がかかる方向に対して、積層面が垂直になるように造形方向(オリエンテーション)を指示することが重要です。また、強度が必要な締結部にはサポート材を適切に配置するか、あらかじめインサートナットを圧入する前提の設計(下穴径の調整など)を行うことで信頼性を担保できます。

積層痕(面粗度)と後加工の手間

出力された部品の表面には、必ず物理的な積層の凹凸(積層痕)が残ります。摺動部品や、意匠性が求められる用途ではこの面粗度が問題になります。

解決策: ABSは切削や研磨といった後加工が非常に容易です。サンドペーパーによる物理的な研磨はもちろん、有機溶剤に対する弱さを逆手に取ったアセトンベーパー(蒸気)処理を行うことで、表面をわずかに溶かし、射出成形品に近い滑らかな面粗度を得ることも可能です。ただし、公差が厳しい箇所はマスキングや後切削(二次加工)を組み合わせる必要があります。

ABSグレード別 物性比較表

各ABSグレードの主な機械的特性は以下の通りです。

機械特性

汎用ABS

ABS-ESD7

ABS-M30i

比重 (g/cm³)

1.04

1.04

1.04

引張強度 (MPa)

31

36

31

破断伸び (%)

-

2

7

荷重たわみ温度 (℃)

80~84

100

82

衝撃強さノッチ付き (J/m)

128

40

128

※本表の数値は一般的な一例であり、保証値ではありません。FDM(熱溶解積層)方式の特性上、積層方向(XY軸・Z軸)、造形パラメータ、内部充填率(インフィル)などの諸条件により、実際の物性値は大きく変動します。設計時は安全率を十分に見込むか、実機でのテスト造形を推奨します。


ABSの3Dプリントはユモパーツにお任せください

本記事で解説したABS材質をはじめとする3Dプリントの材料選定や造形でお困りなら、ユモパーツへご相談ください。切削加工と3Dプリントの加工技術を組み合わせ、試作から本製作までの最適解をご提案します。

YUMO PARTS(ユモパーツ)のABS 3Dプリント事例

事業内容

執筆者:湯本電機株式会社

金属・樹脂の切削加工と3Dプリントを軸に、試作・開発段階の部品加工に特化したエンジニアリングパートナー。年間76,738枚を超える図面見積実績に基づき、アルミ・樹脂から難削材まで200種類以上の材質に対応。単なる受託加工に留まらず、蓄積された膨大な加工データを背景とした「コストダウン提案」や「加工法最適化」に強みを持つ。

最短2時間の高速見積もり回答体制を敷き、大手メーカーの設計・開発部門から、学生フォーミュラ・ロボコン等の次世代エンジニアまで、難易度の高いものづくりを技術面からバックアップしている。

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