アルミニウムの3Dプリント | 軽量かつ高剛性材質の造形
最終更新日:2026/7/21
本記事の要点
アルミニウムの金属3Dプリント(SLM方式)は、軽量かつ高剛性な複雑形状部品の試作や、ダイカストの代替として極めて有効である。
代表的な材質(AlSi12・AlSi10Mg)は高い比強度と鋳造性を持つが、造形時の積層方向によって物性値に異方性が生じる点に注意が必要である。
造形品特有の表面粗さや熱収縮があるため、寸法精度が必要な嵌合部は「後加工(切削・研磨)」を前提とした設計(DfAM)が不可欠である。
3Dプリント用アルミニウム合金の特徴とメリット
金属3Dプリントを用いたアルミニウム合金の造形は、航空宇宙、自動車、治工具などの分野で急速に普及しています。従来の切削加工や鋳造と比較して、以下のような特徴があります。
圧倒的な軽量化の実現
中空構造やラティス構造など、切削では刃物が届かない複雑な内部形状を一体造形できます。
リードタイムの大幅削減
金型を起こす必要がないため、ダイカスト製品の試作や初期ロットの立ち上げを短期間で実行できます。
優れた比強度
アルミニウム本来の軽さに加え、形状の工夫によって高い剛性を確保できます。
3Dプリント用アルミニウム合金の材質と材質比較
金属3Dプリントで主流となっているアルミニウム合金は、シリコン(Si)を添加することで優れた鋳造性と造形性を確保したAlSi12とAlSi10Mgの2種類が代表的です。
アルミニウム合金の特性比較表
以下の表に、両材質の主な特性と物性値を比較します。
項目 | AlSi12(熱処理なし / あり) | AlSi10Mg |
|---|---|---|
主な特徴 | 耐食性・鋳造性(流動性)に優れる | 強度・加工性のバランスに優れる |
主な用途 | 航空宇宙部品、ダイカスト製品の代用 | 自動車・航空部品、小型用エンジン部品 |
引張強さ | 480 MPa / 240 MPa | 330 MPa |
降伏強さ | 270 MPa / 180 MPa | 245 MPa |
引張破断伸び | 8 % / 12 % | 6 % |
硬度 | 137 HB / 90 HB | 120 HB |
※上記表内の物性値は一般的な参考値であり、保証値ではありません。金属3Dプリント品の強度は、造形時の積層方向(Z軸方向とXY平面での異方性)、レーザーの出力パラメータ、造形後の熱処理の有無などによって大きく変動します。設計・強度計算を行う際は、実測値に基づく安全率の考慮が必須です。
材質選定上の注意点
アルミニウムの3Dプリントを実務で成功させるためには、積層造形特有の制約を理解し、それに合わせた設計(DfAM)を行うことが重要です。
表面粗さと寸法精度に対する二次加工の前提
SLM方式で造形されたアルミニウム部品は、一般的にRa 10〜20μm程度の「粉っぽいざらざら」とした表面状態になります。また、急激な加熱と冷却を繰り返すため、熱応力による微小な寸法変化も避けられません。
Oリングのシール面やベアリングの嵌合部など、高い寸法精度や平滑性が要求される箇所に対しては、あらかじめCADデータの段階で0.5〜1.0mm程度の「削り代」を付与してください。造形後にマシニングセンタ等で二次加工(切削・研磨)を行うハイブリッドな工法を前提とすることで、要件を満たすことができます。
熱変形とサポート材除去を考慮した設計
アルミニウムは熱伝導率が高いため、造形中の熱の逃げ道を適切にコントロールしないと、深刻な反りや造形不良を引き起こします。これを防ぐのが強固な金属サポート材ですが、除去作業は手作業や機械加工で行うため、コストアップの要因となります。
設計段階で、オーバーハングの角度を自己支持可能な角度(一般的に45度以上)に設定(ティアドロップ形状の採用など)し、サポート材の発生自体を抑える工夫が必要です。また、工具が物理的に届かない閉鎖された内部空間には、サポート材が立たないような設計変更が求められます。
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アルミニウムの金属3Dプリントは、圧倒的な軽量化や複雑形状の実現といったメリットをもたらす一方で、「実用に耐えうる精度をどうやって出すか」「どこまでを3Dプリントで作り、どこからを切削加工で仕上げるべきか」といった現場レベルの判断が非常に難しい加工技術です。
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