エポキシの3Dプリント | 光造形(SLA)の材質特性とグレード選定ガイド
最終更新日:2026/9/7
本記事の要点
3Dプリントでエポキシと呼ばれる材質は、純粋なエポキシ樹脂ではなく、光造形(SLA)用のエポキシ/アクリレート系ハイブリッド光硬化性樹脂を指すのが一般的である。
エポキシ成分の光カチオン重合は開環反応を伴うため硬化収縮が小さく、大型かつ寸法再現性の高い造形に有利である一方、荷重たわみ温度は60℃前後にとどまり、紫外線劣化や後処理工程での寸法変化は避けられない。
滑らかな表面と透明仕上げを活かせる形状確認・外観試作に最適な材質であり、公差保証・長期使用・耐熱が要求される部品では切削加工など他工法との比較検討が必要である。
エポキシは光造形方式(SLA)の3Dプリントで最も広く使われている材質の一つです。滑らかな表面と寸法再現性の高さが特徴で、形状確認の試作、展示会用モデル、簡易治具、内部流路の可視化モデルなどに用いられます。この記事では3Dプリントにおけるエポキシの基礎的な特徴から、材質選定上の注意点までを解説します。
なぜ光造形にエポキシが選ばれるのか
理由は「硬化収縮の小ささ」にあります。
エポキシ化合物は三員環の開環反応を伴うため、アクリレート化合物よりも硬化収縮が小さく、特に大型の光造形で有利になります。一般的な光硬化系で比較すると、光ラジカル重合が硬化後に10%程度収縮するのに対し、光カチオン重合の収縮率は1〜2%程度と小さく、この差は造形物が大きくなるほど歪みとして顕在化します。
つまりエポキシは、「大きくても歪みにくく、細部が忠実に出る」ことを狙うのに適した材料です。SLAは形状・適合・アセンブリの確認が重要な場面で多く使われ、積層造形の中でも最も滑らかな表面仕上げが得られる方式として位置づけられています。
比較項目 | エポキシ成分(光カチオン重合) | アクリレート成分(光ラジカル重合) |
|---|---|---|
反応速度 | 遅い | 速い |
硬化収縮 | 小さい | 大きい |
造形上の役割 | 寸法精度・形状再現性の確保 | 造形速度の確保 |
※上記は各重合系の一般的な傾向を示したものであり、実際の造形材料は両者を配合したハイブリッド組成です。収縮率の具体値は樹脂系・グレードによって変動します。
エポキシ(SLA)の物性値
機械特性 | 単位 | 試験方法 | 代表値 |
|---|---|---|---|
比重 | g/cm³ | – | 1.07 |
引張強度 | MPa | ASTM D638 | 44 |
曲げ強度 | MPa | ASTM D790 | 68 |
荷重たわみ温度 | ℃ | ASTM D648 | 59 |
衝撃強さ(ノッチ付き) | J/m | ASTM D256 | 34 |
※上記は標準グレードにおける代表値の一例であり、保証値ではありません。光造形品の物性は、二次硬化の条件、造形方向、試験片の作製方法などによって変動します。特に荷重たわみ温度はASTM D648の試験荷重(0.45MPa/1.82MPa)によって数値が大きく変わるため、実設計にあたっては採用予定グレードの最新物性表をご確認ください。
エポキシのグレード一覧
グレード | 特徴 | 色調・質感 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
標準グレード | 表面が滑らかで、後加工により透明処理が可能 | 淡白色/透明/半透明・滑らか | 形状確認試作、展示用模型、流路可視化モデル |
高強度グレード | 標準品より強度・靭性に優れる | 黄緑色・滑らか | 治具、機能確認試作 |
耐熱グレード | 耐熱温度90℃、耐衝撃性も良好 | 灰色・滑らか | 自動車部品の試作、スポーツ用品 |
グレード別の二次加工対応
YUMO PARTSで造形後に対応可能な二次加工は、グレードによって異なります。設計段階で「後加工ありき」の寸法を織り込む場合は、ここを先に確認してください。
二次加工 | 標準グレード | 高強度グレード | 耐熱グレード |
|---|---|---|---|
透明処理 | ○ | – | ○ |
切削 | ○ | – | ○ |
研磨・磨き | ○ | ○ | ○ |
塗装 | ○ | ○ | ○ |
タップ加工 | – | ○ | – |
インサート挿入 | ○ | ○ | ○ |
シルク印刷 | – | ○ | – |
※対応可否は形状・肉厚・要求精度によって変わる場合があります。詳細は個別にご相談ください。
材質選定上の注意点
エポキシは試作用途で扱いやすい材質ですが、以下の弱点を設計段階で織り込んでおかないと、納品後に問題が顕在化します。
耐熱性が低い
標準グレードの荷重たわみ温度は60℃前後です。夏場の車内、装置内の発熱部近傍、屋外の直射日光下などでは、自重やわずかな荷重でも変形するリスクがあります。90℃までであれば耐熱グレードで対応できますが、それを超える環境では、耐熱樹脂の切削加工など他工法への切り替えが現実的です。
紫外線で白濁・脆化する
光で硬化する材料である以上、造形後も紫外線の影響を受け続けます。屋外で使用すると徐々に白く濁り、脆くなります。屋外設置部品や、長期間展示する模型には不向きです。屋内であっても、透明品は経時的に黄変が進む点を見込んでおく必要があります。
後処理工程で寸法が動く
SLAの反り・歪みは造形設定だけが原因ではありません。洗浄時にIPAなどの溶剤を吸収して膨張すること、二次硬化の際に熱と収縮が不均一に進むことが、変形要因の相当部分を占めるとされています。
高精度が要求される部品では、洗浄時間・二次硬化条件・サポート除去のタイミングまで含めて管理できる体制があるかが、精度を左右します。
熱硬化性ゆえに再溶融・溶着ができない
硬化後は熱可塑性樹脂のように再度溶かすことができません。熱溶着や熱曲げによる修正は不可能で、補修手段は接着に限られます。分割造形して接合する設計の場合は、接着代を確保しておいてください。
荷重をかけ続ける用途に向かない
常時荷重がかかる部位では、時間の経過とともにクリープ変形が進みます。位置決め治具や検査治具として長期運用する予定であれば、切削加工品への置き換えを検討する方が確実です。
よくある質問
Q. エポキシの3Dプリント品にネジを切れますか?
高強度グレードであればタップ加工に対応できます。ただし母材が脆く、繰り返しの着脱には耐えにくいため、組立・分解を伴う場合は金属インサートの挿入を推奨します。
Q. 完全に透明な部品は作れますか?
標準グレードは研磨より透明感を高められますが、厚肉部で完全な無色透明にはなりません。また、時間が経つと黄変することがあります。光学的な透明度が必要な場合は、PCやアクリルの切削加工をご検討ください。
Q. 屋外で使えますか?
推奨できません。紫外線により白濁・脆化が進みます。屋外用途では、耐候性を持つ材質や、塗装による保護を前提とした設計が必要です。
Q. エポキシガラスを3Dプリントできますか?
できません。エポキシガラスはガラス繊維とエポキシ樹脂の積層板であり、板材からの切削加工で製作します。
Q. 光造形品は何℃まで使えますか?
標準グレードは荷重たわみ温度が60℃前後、耐熱グレードで90℃程度が上限の目安です。ただし荷重条件によって実用上の限界は下がるため、常時荷重がかかる用途では余裕を見た設計が必要です。
エポキシの3Dプリントはユモパーツにお任せください
YUMO PARTS(ユモパーツ)は、3Dプリントと切削加工の双方を軸に、試作・開発段階の部品加工に特化したエンジニアリングパートナーです。エポキシをはじめとする光造形材料に加え、樹脂・金属あわせて286材質を超える加工実績を活かし、「どちらの工法が有利か」という比較検討のためのお見積りにも対応します。見積もり回答は最短2時間。設計中で図面が固まっていない段階からでも、お気軽にお問い合わせください。
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