FDM方式3Dプリント造形品の面粗度改善 | ABSとOnyxの表面仕上げ比較
最終更新日:2026/7/4
本記事の要点
FDM方式3Dプリントの面粗度は積層ピッチに大きく依存し、ピッチを細かく設定するほど積層段差の少ない滑らかな仕上がりになる。
後加工による表面仕上げとして、ABSにはアセトン処理による平滑化が有効である一方、Onyxはヤスリ掛けで白化・ケバ立ちが生じるなど材質特性に応じたアプローチが必要。
サポート材の除去において、水溶性サポートが使えるABSは面粗度を維持しやすい一方、物理的に剥がすOnyxはサポート面に粗さが残るため、設計段階での造形方向の最適化が求められる。
積層ピッチによる面粗度のコントロール
FDM方式3Dプリントにおいて、仕上がり表面の面粗度に最も直結する要素が積層ピッチです。積層ピッチを細かく設定するほど、表面の凹凸(積層痕)が減少し、より綺麗な仕上がりとなります。
ABSの積層ピッチ設定例

Onyxの積層ピッチ設定例

後加工による表面仕上げ:3つの手法と材質ごとの相性
積層ピッチの調整だけでは設計要件を満たせない場合、後加工を施すことで面粗度を向上させます。材質によって最適な手法が異なるため、特性を理解した上での材質選定が重要です。
手作業によるヤスリ掛け(研磨)
手作業で表面をヤスリ掛けし、凹凸を滑らかにする手法です。外観に積層の層模様は残る場合がありますが、手触りは格段に向上します。
ABS: ヤスリ掛けとの相性が良く、効果的に面粗度を向上させることができます。
Onyx: 材料の性質(ナイロン+炭素繊維)上、ヤスリ掛けをすると表面が白く濁り、ケバ立ちが発生してしまいます。そのため、外観を重視する部品に対してのヤスリ掛けは推奨されません。

アセトン処理
アセトンは水や油との親和性が高く、除光液や接着剤の剥離などにも用いられる有機溶媒で、ABS樹脂を溶かす性質を持っています。 気化したアセトンに造形物を晒して表面を溶かすことで、積層段差が消滅しツルツルとした仕上がりになります。テカリ(光沢)は出ますが、面粗度を劇的に改善できるため、外観部品の試作などにに適しています。(※Onyxには適用できません)
アセトン前

アセトン後

切削加工による仕上げ
3Dプリンターで造形した部品の表面を、切削加工で削り出して仕上げる手法です。完全な切削加工品と遜色のない高精度で綺麗な面粗度を実現できます。寸法精度が厳しく要求される嵌合部や、Onyxなどのヤスリ掛けが難しい材質に有効です。ただし、切削工具が入らない複雑な内部形状やアンダーカットには加工できないという制約があります。

サポート材が面粗度に与える影響と「造形方向」の重要性
FDM方式は下から上へ樹脂を積み上げていくため、空中に浮いたオーバーハング形状にはサポート材が付加されます。このサポート材が接する面の面粗度は、利用する材料のサポート除去方式によって大きく異なります。
ABSの場合(水溶性サポート): モデル本体とサポート材が別々の材料で造形され、サポート材のみを専用の溶液で溶かすことができます。物理的に剥がす工程がないため、サポートが付いていた面も付いていなかった面も、面粗度は変わりません。
Onyxの場合(単一材料サポート): モデル本体とサポート材が同じ材料で作られるため、造形後にペンチ等でサポートを物理的に引き剥がす必要があります。その際、剥がした跡にケバ立ちやカエリが生じ、面粗度が粗くなります。

【設計時のアドバイス】
Onyxのようにサポート除去面が粗くなりやすい材質を使用する場合、「高い面粗度や寸法精度が求められる面にはサポート材が付かないようにする」という造形方向(オリエンテーション)の最適化が、設計・データ作成段階で不可欠となります。
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