コバール合金の切削加工 | 低熱膨張合金の精密切削加工
最終更新日:2026/9/7
本記事の要点
コバールは鉄・ニッケル・コバルトを主成分とする低熱膨張合金であり、ガラスやセラミックスと熱膨張率が近いため、異種材料を気密に接合するガラス封着用途で優れた性能を発揮する。
気密封止や寸法安定性に優れることから、半導体、MEMS、光通信、真空機器など、高い信頼性が求められる分野で幅広く利用されている。
コバールは優れた機能性を持つ一方で、加工硬化しやすく工具摩耗も生じやすい難削材であるため、加工性や表面処理まで考慮することで、品質や生産性の向上につながる。
コバールとは
コバール合金は、鉄(約54%)、ニッケル(約29%)、コバルト(約17%)を主成分とした金属です。コバール(Kovar)という名称は、Carpenter Technology Corporation社の登録商標として知られています。
最大の特長は、常温付近での熱膨張率が極めて低く、硬質ガラスやセラミックスと広い温度範囲で熱膨張係数が近似している点です。この特性を活かし、金属とガラスを接着・封着(気密封止)させる用途において不可欠な材料となっています。
コバールの特徴
コバールは、熱膨張率を制御するために開発された特殊合金であり、一般的な鉄鋼材料やステンレスとは異なる特性を持っています。特に、ガラスやセラミックスとの接合性に優れることから、電子部品や光学部品など、高い信頼性が求められる分野で広く採用されています。ここでは、設計時に押さえておきたいコバールの主な特徴を紹介します。
ガラス・セラミックスと近い熱膨張率
コバール最大の特徴は、熱膨張率がガラスやアルミナなどのセラミックスと近いことです。温度変化による膨張・収縮の差が小さいため、接合部に発生する熱応力を抑えることができ、割れや気密漏れのリスクを低減できます。この特性により、ガラス封着やセラミック封着を必要とする部品に広く使用されています。
ガラス封着性に優れる
コバールは、ホウケイ酸ガラスなどと熱膨張率がよく一致するため、加熱して接合した後も接合部に大きな応力が残りにくく、高い気密性を維持できます。そのため、半導体パッケージや真空機器、センサーなど、長期間の信頼性が求められる用途で採用されています。
寸法安定性に優れる
熱膨張率が低いことから、温度変化による寸法変化が小さく、位置決め精度が求められる部品にも適しています。レーザーダイオードや光通信部品など、わずかな変形が性能に影響する用途でも活用されています。
コバールの物理的性質・機械的性質
密度(g/cm) | 融点(℃) | 電気抵抗20℃(μΩ・cm) | 引張強度20℃(MPa) | 耐力(MPa) | 伸び(%) | ヤング率(GPa) | 熱伝導率20℃(W/(m・K)) | 磁気変態点(℃) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
8.35 | 1450 | 49 | 540 | 270 | 35 | 159 | 17 | 430 |
コバールが使われる用途
コバールは、熱膨張率がガラスやセラミックスと近く、ガラス封着性や気密性に優れることから、高い信頼性が求められる電子・光学・真空分野で広く使用されています。一般的な機械構造部品に使用されることは少なく、異種材料との接合や気密封止が必要な部品でその特性を発揮します。
半導体パッケージ
半導体チップを保護する金属製・セラミック製パッケージのリードフレームやケース、キャップなどに使用されます。ガラスやセラミックスとの熱膨張率が近いため、封着部の応力を抑え、高い気密性と長期信頼性を確保することができます。
光通信・光学部品
レーザーダイオードやフォトダイオード、光通信モジュールなどのパッケージにも採用されています。温度変化による寸法変化が小さいため、光軸のずれを抑えられ、安定した光学性能を維持できます。
MEMSセンサー・電子部品
圧力センサーや加速度センサーなどのMEMSデバイスでは、内部を気密封止する必要があります。コバールはガラス封着との相性が良く、外部環境から素子を保護しながら高い信頼性を実現できます。
真空機器・電子管
真空管やX線管、電子顕微鏡などの真空機器では、ガラスと金属を接合する封着部材として使用されます。真空状態を長期間維持できるため、真空容器へ電気信号を導入する端子にも広く採用されています。
医療・航空宇宙分野
高い気密性や長期信頼性が求められる医療機器や航空宇宙機器にも使用されています。温度変化の大きい環境でも封着部の信頼性を維持しやすく、高精度な電子機器やセンサーの性能を支える材料として利用されています。
以下のように、「加工できるが、一般的な鋼材よりも難削材である」という点を軸にまとめると、設計者向けの記事として実用的です。
コバールの加工性
コバールは切削加工やプレス加工、溶接などに対応できる材料ですが、一般的な炭素鋼や快削鋼と比べると加工性は劣り、加工条件や工具選定に配慮が必要な難削材です。特に、加工硬化しやすいことや熱伝導率が低いことから、切削熱が工具に集中しやすく、工具摩耗が進みやすいという特徴があります。
切削加工
コバールは旋盤加工やフライス加工、穴あけ加工などが可能です。しかし、加工硬化しやすいため、切込みが浅すぎると硬化層を繰り返し削ることになり、工具寿命の低下や加工面の品質悪化につながることがあります。また、熱伝導率が低いため切削熱が逃げにくく、適切な加工条件の設定が重要です。
プレス加工
板材はプレス加工にも対応していますが、加工条件によってはスプリングバックや加工硬化を考慮する必要があります。曲げ加工や絞り加工では、材料特性を踏まえた金型設計や加工条件の最適化が求められます。
溶接・ろう付け
コバールはTIG溶接やレーザー溶接、ろう付けなどが可能で、電子部品や真空部品の製造にも広く利用されています。特に、ガラスやセラミックスとの封着部品では、接合後の気密性を確保するため、溶接条件や熱影響を考慮した加工が重要です。
表面処理
コバールは耐食性がステンレス鋼ほど高くないため、使用環境に応じてニッケルめっきや金めっきなどの表面処理が施されることがあります。また、半導体や電子部品では、はんだ付け性やワイヤボンディング性を向上させる目的でめっき処理が採用されるケースもあります。
コバール合金の精密切削加工加工・試作はユモパーツにご相談ください
YUMO PARTS(ユモパーツ)では、アルミニウム合金やステンレス鋼はもちろん、コバール合金のような難削材の切削加工にも対応可能です。これまでに、外径φ7、内径φ3、長さ15mmといった小径・微細な精密旋盤加工の実績もございます。
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