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Onyx(オニキス)の3Dプリント | 金属同等の強度を実現する長繊維強化

Onyx(オニキス)の3Dプリント | 金属同等の強度を実現する長繊維強化

最終更新日:2026/7/21

本記事の要点

  1. Onyxはナイロンに短炭素繊維を配合したFDM方式用材料であり、単体でも高強度・高耐熱・耐薬品性に優れている。

  2. カーボンやグラスファイバーなどの連続長繊維を充填することで、アルミニウム合金(6000番台)に匹敵する強度を実現できる。

  3. ナイロン由来の吸水性による寸法変化や、サポート除去時の面粗度低下、積層方向による強度の異方性といった課題があり、設計・造形時の配慮が必要である。


機械部品の設計において、「金属部品を樹脂化して軽量化したいが、強度が足りない」「リードタイムを短縮するために3Dプリントを活用したい」といった課題を抱える設計・開発者の方は多いのではないでしょうか。

本記事では、金属部品の代替としても使用されるOnyxの基本的な特徴から、連続長繊維による高強度化のメカニズム、物性値の比較、現場で直面しやすいデメリットとその具体的な解決策までを網羅的に解説します。

Onyx(オニキス)とは

Onyx(オニキス)は、FDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンターで使用される特殊なフィラメント材料です。ベースとなるPA(ポリアミド)樹脂に、短炭素繊維を配合して作られています。ナイロンが本来持つ優れた耐熱性や柔軟性・靭性に、カーボン特有の剛性と耐衝撃性が付加されているのが最大の特徴です。

色はマットな黒色(ブラック)のみですが、積層痕が目立ちにくく、一般的なFDM方式の樹脂材料と比較して非常に良好な表面仕上がりを実現します。そのため、試作品にとどまらず、生産ラインの治具や、エンドユースの機構部品としてもそのまま実戦投入が可能です。

Onyx単体が持つ優れた3つのメリット

Onyxは、強化繊維を追加しない単体の造形でも、エンジニアリングプラスチックとして非常に優れたパフォーマンスを発揮します。

高強度と靭性の両立

ナイロンの弱点である剛性不足をカーボン粉末が補うことで、高強度と靭性を高い次元で両立しています。衝撃に強く、割れにくい造形物が得られるため、機械的な負荷がかかる部品の製作に適しています。

高い耐熱性と耐薬品性

Onyxの耐熱温度は最大145℃と非常に高く、熱を帯びるモーター周辺のカバー部品や、高温環境下での作業用治具としても使用可能です。また、ベースがナイロンであるため耐薬品性にも優れており、工場内で使用される潤滑油や切削液、一般的な化学薬品に対しても強い耐性を持ちます。

軽量性と滑らかな仕上がり

フィラメントが細かく射出されるため、表面は比較的滑らかに仕上がります。金属(アルミ等)と比較して圧倒的に軽量であるため、ロボットアームの先端ツールや、軽量化が求められる可動部パーツへの代替に最適です。

連続長繊維(ファイバー)充填によるアルミ合金並みの高強度化

Onyxの真価は、造形中に長繊維(連続繊維)を内部に充填・積層できる点にあります。

一般的な切削用のFRP(繊維強化プラスチック)や、他社のカーボン配合フィラメントは、繊維が細かく破断された状態で混ざっています。そのため、繊維と並行方向の引張負荷に対しては十分な強度を発揮しきれません。

一方、Onyxを用いた特定の3Dプリントシステムでは、破断されていない一本の長い繊維(長繊維)を、一筆書きのように造形物の内部に埋め込むことができます。これにより、プラスチックでありながらアルミニウム合金(6000番台)に匹敵する強度を実現します。

強化素材(ファイバー)の種類と機械的特性の比較

充填するファイバーには主に4つの種類があり、用途や必要とされる強度・環境に応じて使い分けます。以下の表は、Onyx単体および各ファイバーを充填した際の機械特性の比較です。

材料・ファイバー名

比重 (g/cm³)

耐熱温度 (℃)

引張強度 (MPa)

曲げ強度 (MPa)

主な特徴と適した用途

Onyx(単体)

1.18

145

36

81

ナイロン+短炭素繊維。高い靭性と耐熱性。一般的な治具やカバー類。

カーボン

1.4

105

800

540

最も高強度。アルミ合金同等の曲げ強度。金属部品の代替。

ケブラー

1.25

105

610

240

優れた耐衝撃性と高い靭性。繰り返し衝撃や重さがかかるパーツ、把持部。

グラスファイバー

1.6

105

590

200

高強度かつ安価(ABSの約10倍の強度)。カーボンのコストダウン代替。

高強度高温グラスファイバー

1.6

150

600

420

高い強度と最高レベルの耐熱性。高温環境下での成形治具や溶接治具など。

上記の数値はカタログスペック等に基づく一般的な参考値であり、物性値を保証するものではありません。FDM方式の特性上、実際の強度は「積層方向(Z軸方向の強度は低下する)」「ファイバーの充填率と配置ルート」「造形時の環境(温度・湿度)」などの条件によって大きく変動します。設計時には適切な安全率を見込んでください。

Onyx材質選定上の注意点

Onyxは万能な材料に見えますが、材料特性やFDM方式に起因する現場特有の課題が存在します。トラブルを防ぐためには、以下のデメリットを理解し、設計・運用でカバーすることが重要です。

ナイロン特有の吸水性による寸法変化と物性低下

Onyxのベースであるナイロンは吸水性が高いプラスチックです。大気中の水分を吸収すると、寸法が膨張したり、強度が低下したりする懸念があります。また、吸湿したフィラメントで造形すると、ノズル内で水分が沸騰して造形不良の原因になります。

フィラメントは必ず専用の防湿ボックス(ドライボックス)内で保管し、造形中も外気に触れさせない徹底した湿度管理が必要です。また、水回りや高湿度環境下で使用する部品の場合、吸水膨張による寸法変化を見越し、あらかじめスライサーソフト上でスケール補正を行うか、はめ合い公差を広めに設計する配慮が必要です。

サポート材除去による面粗度の低下

Onyxの造形では、造形モデル本体と、オーバーハング部を支えるサポート材が全く同じOnyx材料で造形されます。そのため、造形後にペンチなどで物理的にサポート材を剥がし取る必要があり、サポートが付着していた面にはケバ立ちやカエリ(バリ)が残り、面粗度が著しく粗くなります。

高い面精度が要求される基準面や、相手部品との摺動面にはサポート材が付かないよう造形姿勢を工夫します。設計段階からアンダーカットを極力排除するか、サポート面が機能に影響しない面(逃がし形状など)になるようDfAMを意識することが重要です。必要に応じて、後工程で研磨や切削加工による仕上げを追加します。

積層方向による強度の異方性とファイバー配置の制限

FDM方式は樹脂を積み上げていくため、層と層の接着面(Z軸方向)は、XY平面方向に比べて強度が大幅に落ちます(異方性)。また、連続長繊維はノズルの軌道上に入れるため、一定以上の厚みがない薄肉部や、微細で複雑すぎる形状の内部には充填することができません。

部品に最も大きな引張応力・曲げ応力がかかる方向を分析し、その力がZ軸(積層の剥がれる方向)に働かないように造形姿勢を最適化します。さらに、ファイバーを確実に充填させるために、強度が必要な箇所は肉厚を十分に持たせる設計を取り入れることが重要です。


Onyxを活用した高強度な部品・治具の製作はユモパーツにご相談ください

Onyxは、適切に設計しファイバーを組み合わせることで、従来の金属部品を強力な樹脂パーツへと置き換え、大幅な軽量化とコストダウン、リードタイムの短縮を実現できる画期的な材料です。しかし、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、吸水性や強度の異方性、サポート面を考慮した3Dプリントならではの設計ノウハウが不可欠です。

YUMO PARTS(ユモパーツ)では、豊富な部品加工の知見を活かし、Onyxをはじめとする最適な加工方法や材質の選定から、3Dプリントに最適化された設計提案(DFAM)まで一貫してサポートいたします。

「アルミの削り出し部品を樹脂化して軽量化したい」「強度の高い製造用治具を短納期で製作したい」といったお悩みがございましたら、ぜひお気軽にユモパーツまでご相談ください。お客様の課題解決に最適なソリューションをご提案いたします。

YUMO PARTS(ユモパーツ)のOnyx(オニキス)の3Dプリント事例

事業内容

執筆者:湯本電機株式会社

金属・樹脂の切削加工と3Dプリントを軸に、試作・開発段階の部品加工に特化したエンジニアリングパートナー。年間76,738枚を超える図面見積実績に基づき、アルミ・樹脂から難削材まで200種類以上の材質に対応。単なる受託加工に留まらず、蓄積された膨大な加工データを背景とした「コストダウン提案」や「加工法最適化」に強みを持つ。

最短2時間の高速見積もり回答体制を敷き、大手メーカーの設計・開発部門から、学生フォーミュラ・ロボコン等の次世代エンジニアまで、難易度の高いものづくりを技術面からバックアップしている。

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