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PC-ABSの3Dプリント | 強度と耐熱性を両立する

PC-ABSの3Dプリント | 強度と耐熱性を両立する

最終更新日:2026/7/22

本記事の要点

  1. PC-ABSは、ポリカーボネートの耐熱性・高強度と、ABSの優れた成形性を併せ持つFDM(熱溶解積層)方式の3Dプリント用アロイ樹脂である。

  2. 耐熱温度は約110℃と一般的なABSより高く、機械的特性にも優れるため、プロトタイプだけでなく自動車部品や電化製品の最終製品にも適用可能である。

  3. FDM方式特有の積層痕による寸法誤差や、積層方向の強度低下といった異方性が生じるため、二次加工や造形姿勢を考慮した設計が求められる。


3Dプリント材料PC-ABSとは

PC-ABSは、高い耐衝撃性と耐熱性を誇るポリカーボネート(PC)と、加工性に優れたABS樹脂を混ぜたアロイ(複合)樹脂です。FDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンター材料として広く普及しており、双方のプラスチックの長所をバランス良く兼ね備えています。

通常のABS樹脂と比較して引張強度や耐熱性に優れており、より過酷な環境下での使用に耐えうるポテンシャルを持っています。

PC-ABSの特徴と設計上のメリット

優れた機械的強度と耐熱性の両立

最大のメリットは、PC由来の高い強度と耐熱性です。耐熱温度は約110℃に達し、モーター周辺のカバーや自動車のエンジンルーム付近の部品など、熱を帯びやすい環境下でも変形しにくい特性を持ちます。これにより、機能検証用の試作品に留まらず、最終製品としても実用化されています。

豊富な二次加工の選択肢

ABS由来の加工性の良さも大きな特徴です。3Dプリントでの造形後、切削加工、研磨、塗装、インサート挿入などの多様な二次加工を施すことができます。

PC-ABS選定上の注意点

部品設計を行う上で、PC-ABSの特性による注意点を理解し、適切に対策することが品質向上の鍵となります。

FDM方式特有の面粗度と寸法精度

FDM方式の特性上、表面には必ず積層痕が生じます。金型成形と同等の表面滑らかさや、H7などの厳しい寸法公差が求められる部位にはそのままでは使用できません。

【対策】はめ合い部やOリングのシール面など、高い精度が必要な箇所は、あらかじめ切削シロ(0.5〜1.0mm程度)を見込んだオーバーサイズでモデリングし、造形後に機械切削で仕上げる設計が推奨されます。

積層方向による強度の低下

FDM方式で出力された部品は、積層面(Z軸方向)に対する引っ張りやせん断応力に弱いという異方性を持ちます。データ上の引張強度が満たされていても、力が加わる方向によっては層間剥離を起こすリスクがあります。

【対策】部品に最も大きな荷重がかかる方向を事前に予測し、荷重方向に対して積層面が垂直にならないよう、最適な造形姿勢を指定することが重要です。

吸水性による造形不良や寸法変化

PC-ABSは空気中の水分を吸収しやすい性質(吸水性)を持っています。吸湿した状態で造形すると、ノズル内での水分の沸騰による気泡の発生、糸引き、層間密着力の低下を引き起こします。

【対策】加工会社では専用のフィラメント乾燥機を用いて徹底した防湿管理を行っていますが、設計・調達側も「材料の吸水管理が品質に直結する」という前提を知っておく必要があります。

PC-ABSの物性値と一般的なABSとの比較

以下の表は、PC-ABSの代表的な物性値と、一般的なABS樹脂の参考数値を比較したものです。

特性(単位)

試験方法

PC-ABS

一般的なABS(参考)

比重 (g/cm³)

1.1

1.03 ~ 1.06

耐熱温度 (℃)

110

70 ~ 90

引張強度 (MPa)

ASTM D638

34

30 ~ 45

曲げ強度 (MPa)

ASTM D790

59

50 ~ 65

荷重たわみ温度 (℃)

ASTM D648

84

75 ~ 85

衝撃強さ (J/m) ※ノッチ付

ASTM D256

235

100 ~ 200

※上記の数値はASTM規格に基づく試験結果の一般的な一例であり、保証値ではありません。FDM方式の3Dプリント品の物性は、積層方向(造形姿勢)、ノズル温度、内部充填率などの条件によって大きく変動します。

PC-ABSの主な用途

強度と耐熱性、そして後加工の容易さを活かし、大型部品から精密機器まで幅広い分野で活用されています。

分野

用途例

自動車

エンジン用マニホールド、ダクト、各種ブラケット

電化製品

筐体(ハウジング)、内部の機構部品カバー

製造現場

生産ラインの自動化治具、検査用検具


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YUMO PARTS(ユモパーツ)のPC-ABSの3Dプリント事例

事業内容

執筆者:湯本電機株式会社

金属・樹脂の切削加工と3Dプリントを軸に、試作・開発段階の部品加工に特化したエンジニアリングパートナー。年間76,738枚を超える図面見積実績に基づき、アルミ・樹脂から難削材まで200種類以上の材質に対応。単なる受託加工に留まらず、蓄積された膨大な加工データを背景とした「コストダウン提案」や「加工法最適化」に強みを持つ。

最短2時間の高速見積もり回答体制を敷き、大手メーカーの設計・開発部門から、学生フォーミュラ・ロボコン等の次世代エンジニアまで、難易度の高いものづくりを技術面からバックアップしている。

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