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PEI(ULTEM / ウルテム)の3Dプリント | ULTEM 1010と9085の違い

PEI(ULTEM / ウルテム)の3Dプリント | ULTEM 1010と9085の違い

最終更新日:2026/7/13

本記事の要点

  1. ULTEM1010は最高レベルの耐熱性(約216℃)と食品接触・生体適合性を持ち、ULTEM9085は優れた難燃性(UL94-V0相当)とFST特性を備えている。

  2. 3Dプリント(FDM方式)の特性上、どちらの材質も積層方向による強度の異方性や、表面に積層痕が生じる物理的制約が存在する。

  3. 要求精度を満たすためには、造形方向の最適化や、切削・研磨などの後加工を前提とした設計が不可欠である。


3DプリントにおけるULTEM(ウルテム)とは

ULTEM(ウルテム)は、米国のSABIC社が開発したPEI(ポリエーテルイミド)ベースのスーパーエンジニアリングプラスチックです。高い耐熱性、優れた機械的強度、そして耐薬品性を兼ね備えており、金属部品の代替として航空宇宙、医療、自動車など過酷な環境下で採用されています。

FDM(熱溶解積層)方式の3Dプリント材料としても広く普及し、試作だけでなく最終製品の直接製造にも利用されています。

ULTEM1010とULTEM9085の物性・特徴比較

設計・開発において、ULTEM1010と9085のどちらを選定すべきかは、要求される耐熱温度や認証要件によって異なります。以下の表に主要な物性を比較します。

項目

ULTEM 1010

ULTEM 9085

ベース樹脂

PEI(ポリエーテルイミド)

PEI(ポリエーテルイミド)

比重 (g/cm³)

1.34

1.27

引張強度 (MPa)

81

69

弾性率 (GPa)

2.77

2.2

破断伸び (%)

3.3

5.8

荷重たわみ温度 (℃)

213

153

衝撃強さ ノッチ付 (J/m)

41

106

主な特長・認証

食品接触(NSF 51)
生体適合性(ISO10993)

難燃性(UL94-V0相当)
FST特性

カラー

茶色

ブラック、タン

上記の物性値は一般的な材料仕様に基づく参考値であり、性能を保証するものではありません。FDM方式の3Dプリント部品は、積層方向(X, Y, Z軸の姿勢)、内部充填率、および造形時の熱収縮の影響により、実際の機械的強度や寸法が大きく変動します。実設計においては、安全率を十分に考慮した評価が必要です。

物性から読み解く選定のヒント:剛性の1010、靭性の9085

表の通り、ULTEM1010は引張強度や弾性率が高く、変形しにくい剛性に優れます。一方で衝撃強さは41J/mと低く、比較的脆い(割れやすい)特性があります。対してULTEM9085は、衝撃強さが106J/mと非常に高く、破断伸びも大きいため、外部からの衝撃や振動に耐えうる靭性に優れています。用途に応じて「硬さ」か「割れにくさ」のどちらを優先するかで材質を選定してください。

ULTEM1010の強みと主な用途

最高レベルの耐熱性と安全認証

ULTEM1010は、3Dプリント樹脂の中でもトップクラスの耐熱性(荷重たわみ温度約213℃)を誇ります。さらに、生体適合性(ISO10993、USP Class Ⅵ認定)や、3Dプリンター向け材質としては唯一となる食品接触認定(NSF 51)を取得している点が最大の特徴です。オートクレーブ等の高温滅菌処理にも耐えうるため、医療用サージカルガイドや食品製造ラインの治具などに採用されます。

【注意点】食品・医療用途における「空隙(ポロシティ)」のリスク

ULTEM1010の材質自体は食品接触や生体適合性をクリアしていますが、FDM方式で造形した部品には微小な空隙や積層痕が必ず存在します。そのままの状態では空隙に汚れや水分が溜まり、バクテリアの温床となるリスクがあります。実際のラインで使用する際は、表面を平滑にする研磨加工や、食品衛生法に適合するコーティング処理など、物理的な衛生面を担保する後加工を必ずセットで検討してください。

ULTEM9085の強みと主な用途

航空宇宙基準を満たす難燃性とFST特性

ULTEM9085は、耐熱性(荷重たわみ温度153℃)と優れた比強度をバランス良く備えた材質です。特に、UL94-V0相当の難燃性を持ち、厳しいFST基準(可燃性・排煙度・有毒性基準)をクリアしているため、民間航空機の内装部品として広く認可・使用されています。靭性に優れるため、外部からの振動が加わる機能試作品やドローン部品、配管部品などにも適しています。

FDM方式における技術的課題と解決策

ULTEMの3Dプリント部品を実務で活用する際、材料のスペックだけでなくFDM方式特有の制約にどう対処するかが設計の鍵となります。

1. 積層痕(面粗度)と寸法精度の限界

FDM方式は樹脂を溶かして積み上げるため、表面に必ず積層の凹凸が生じ、切削加工と同等の面粗さや厳しい公差(例:H7公差など)を造形のみで実現することは困難です。

【解決策】
Oリングのシール面やベアリングの圧入部など、高い精度が必要な箇所は、あらかじめ0.5〜1.0mm程度の削り代を設けて造形し、後工程でCNCマシニング等による切削・研磨仕上げを行う設計にしてください。ただし、ULTEMはスーパーエンプラであり切削時の工具摩耗が激しいため、全面を切削するのではなく機能上必須な面のみを二次加工の指示に留めることで、加工コストとリードタイムを大幅に削減できます。

2. 強度の異方性(Z軸方向への脆弱性)

XY平面(積層面に対して平行)の強度は高い一方で、Z軸方向(積層方向)は層間の結合力が弱く、引張応力がかかると層間剥離(割れ)を起こしやすいという弱点があります。

【解決策】
部品に加わる主応力の方向をCAD上で分析し、応力がZ軸方向に強くかからないよう、造形姿勢(ビルドオリエンテーション)を指定することが重要です。強度が不足する場合は、必要箇所への金属インサートの挿入なども有効な手段です。


PEI(ULTEM / ウルテム)の3Dプリントはユモパーツにお任せください

本記事で解説したULTEM1010やULTEM9085などの樹脂材質の3Dプリントでお困りなら、ユモパーツへご相談ください。3Dプリントと切削加工の技術を組み合わせ、試作から本製作までの最適解をご提案します。

PEI(ULTEM / ウルテム)の3Dプリント事例

事業内容

執筆者:湯本電機株式会社

金属・樹脂の切削加工と3Dプリントを軸に、試作・開発段階の部品加工に特化したエンジニアリングパートナー。年間76,738枚を超える図面見積実績に基づき、アルミ・樹脂から難削材まで200種類以上の材質に対応。単なる受託加工に留まらず、蓄積された膨大な加工データを背景とした「コストダウン提案」や「加工法最適化」に強みを持つ。

最短2時間の高速見積もり回答体制を敷き、大手メーカーの設計・開発部門から、学生フォーミュラ・ロボコン等の次世代エンジニアまで、難易度の高いものづくりを技術面からバックアップしている。

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