PEKKの3Dプリント | PEEK相当の3Dプリント材質の特徴と選定メリット
最終更新日:2026/7/13
本記事の要点
PEKK(ポリエーテルケトンケトン)は、最高レベルの強度と耐熱性を誇る、PEEKに相当する高性能なスーパーエンプラ3Dプリント材質である。
優れた耐摩耗性や耐薬品性に加え、真空下での低アウトガス特性を持つため、航空宇宙や半導体製造装置などの過酷な環境での使用に適している。
3Dプリントの強みである中空構造や一体造形を活かすことで、高機能材質でありながら切削加工に比べて材料ロスを抑え、トータルコストの削減に繋がる場合がある。
PEKK(ポリエーテルケトンケトン)とは
PEKK(ポリエーテルケトンケトン)は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などと同じPAEK(ポリアリールエーテルケトン)ファミリーに属する、最高峰の熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチックです。米ボーイング社が航空機の機体・内装部品への使用を認可したことで、一躍その名を知られるようになりました。
3Dプリントにおいては、主に熱溶解積層方式(FDM方式)用の高機能フィラメント材料として使用されます。切削加工の定番であるPEEKとほぼ同等の優れた機械的強度や熱的特性を、3Dプリントの造形によって実現できるため、金属代替や軽量化を狙う設計開発の現場で大きな注目を集めています。
PEKKの物性値
項目 | 単位 | 数値 |
|---|---|---|
比重 | g/cm³ | 1.28 |
引張強度 | MPa | 90.6 |
弾性率 | GPa | 2.92 |
破断伸び | % | 6.4 |
荷重たわみ温度 | ℃ | 147 |
衝撃強さ(アイゾット ノッチ付) | J/m | 44 |
※上記の物性値は一般的な材料仕様に基づく参考値であり、性能を保証するものではありません。FDM方式の3Dプリント部品は、積層方向(X, Y, Z軸の姿勢)、内部充填率、および造形時の熱収縮の影響により、実際の機械的強度や寸法が大きく変動します。実設計においては、安全率を十分に考慮した評価が必要です。
PEKKの特徴
圧倒的な強度と耐熱性
PEKKは、プラスチック(樹脂)材料の中で最高レベルの強度を誇り、連続使用温度は約260℃と極めて高い耐熱性を持ちます。そのため、高い耐久性と安全性が求められる航空宇宙分野や宇宙船部品、自動車のエンジン周辺部品に採用されています。
優れた耐摩耗性・耐薬品性
機械的な摩擦に対する耐摩耗性が高く、摺動を伴う機構部品にも適しています。また、酸やアルカリ、有機溶剤といった過酷な薬品環境下でも物性が劣化しにくい強固な結晶構造を持っています。
真空環境下での低アウトガス特性
宇宙空間や半導体製造装置の内部などの真空環境では、材料から放出されるガス(アウトガス)が精密機器の汚染原因となります。PEKKは真空内でのガス放出が極めて少ないため、高度なクリーン環境や宇宙空間での利用に最適な特性を備えています。
コスト面の課題
非常に高性能である反面、PEKKの材料自体は他の一般的な樹脂(PLAやABS、ナイロンなど)と比較して非常に高価です。また、超高温でのノズル制御や機体内温度管理ができる、限定された産業用3Dプリンターでしか造形できないため、初期コストや加工コストが高くなる傾向があります。
PEKKのメリット
高価なPEKKですが、切削加工で同等材質を加工する場合と比較すると多くのメリットがあります。
複雑形状や複数部品の一体造形が可能
PEKKを用いることで、従来のPEEK切削加工では削り出すことが不可能だった「中空構造」や「複雑なアンダーカット形状」の製作が可能になります。また、これまで複数の部品に分けてボルト留めしていた構造を、3Dプリントによって一つの部品(一体造形)として出力できるため、部品点数の削減や組み立て工数の削減、さらには大幅な軽量化を実現できます。
トータルコストを削減できる場合がある
PEKKの材料単価は高額ですが、切削加工(削り出し)のように大きなブロックから大部分を削り落として廃棄する材料ロスが発生しません。3Dプリントは必要な箇所に必要な分だけ材料を積層するため、形状によっては切削加工よりも材料費・加工費を抑えられ、高機能材質でありながらコストダウンに繋がることがあります。
試作から実用部品へダイレクトに適用
優れた機械的強度を持つPEKKは、単なる「形状確認のための試作」に留まらず、そのまま製品の「実用部品」として十分に機能します。過酷な環境テストに耐えうる試作パーツを迅速に調達し、評価が終わり次第そのまま最終製品として組み込むといった、開発サイクルの高速化を可能にします。
「PEKK(3Dプリント)」と「PEEK(切削加工)」の使い分け
設計要件に応じて、3Dプリント(PEKK)と切削加工(PEEK)のどちらを選択すべきかは以下の基準を参考にしてください。
形状の複雑さ・軽量化重視なら「PEKK(3Dプリント)」
内部を空洞にする(インフィル率の調整)ことでの軽量化や、切削工具が届かない中空・ハニカム構造、一体造形を求める場合は3Dプリントが最適です。
寸法精度・幾何公差・表面粗さ重視なら「PEEK(切削加工)」
3Dプリントには特有の積層痕が残るため、極めて滑らかな表面や、厳しい寸法公差(嵌合部など)が求められる場合は、ブロックからの精密な切削加工が有利です。
形状や用途に合わせて、3Dプリントと切削加工を柔軟に組み合わせる、あるいは3Dプリント後に特定箇所だけを切削仕上げ(追加工)するといったアプローチも効果的です。
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