PTFEの切削加工 | 摺動性に優れたフッ素樹脂の精密切削加工
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本記事の要点
PTFEは、耐熱性・耐薬品性・低摩擦性・絶縁性などに優れ、軸受や摺動部品、絶縁部品など幅広い用途で使用される代表的なフッ素樹脂である。
優れた特性を持つ一方、熱膨張が大きく、機械的強度・剛性が低いほか、クリープ変形や摩耗が起こりやすいため、使用環境や荷重を考慮した材料選定が重要である。
材料価格や加工コストが高くなりやすいが、切削加工による部品製作も可能であり、耐熱性・耐薬品性・低摩擦性などを活かした部品に適している。
PTFEとは
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、フッ素を含む代表的なフッ素樹脂です。耐熱性や耐薬品性、電気絶縁性に優れるほか、摩擦係数が非常に小さく、優れた低摩擦性を持つことが特徴です。また、難燃性や耐候性にも優れており、過酷な環境で使用される部品にも適しています。シール材やガスケット、軸受、摺動部品、絶縁部品など、耐熱性・耐薬品性・低摩擦性が求められる用途で幅広く使用されています。
PTFEは一般的に「テフロン」と呼ばれることも多く、「テフロン™」はケマーズ社およびその関連会社の登録商標として使用されています。
PTFEの基本物性・特性
比重 | 耐熱温度 | 電気特性 | 寸法安定性 | 耐摩耗性 | 耐衝撃性 | すべり特性 |
|---|---|---|---|---|---|---|
2.14 | -250℃~260℃ | 絶縁 | × | △ | ○ | ◎ |
※上記の数値・評価は代表的なグレードにおける目安であり、製品やグレード、使用環境によって異なります。材料選定の際は、メーカーの最新仕様をご確認ください。
PTFEの特徴とメリット
耐熱性・耐寒性に優れる
高温から低温まで幅広い温度範囲で使用できる優れた温度特性を持ちます。炭素骨格をフッ素原子が密に覆う分子構造により、高温下でも分子結合が安定しており、熱による軟化や劣化が起こりにくい特性を持ちます。一般的なPTFEの連続使用温度は約260℃とされています。また、低温環境でも特性を維持しやすく、極低温用途にも使用されています。温度変化の大きい環境でも使いやすいため、化学装置や半導体製造装置、シール材など、温度条件が厳しい用途に適しています。
低摩擦性である
摩擦係数が非常に小さいことが大きな特徴です。フッ素原子によって形成された安定した分子構造により、材料表面の摩擦が小さく、相手材と接触して動く場合でも滑らかに摺動できます。そのため、潤滑油などを使用しにくい環境でも、低摩擦性を活かした部品設計が可能です。軸受やシール、ガイド、摺動部品などに使用されるほか、表面の非粘着性にも優れています。
耐薬品性に優れる
非常に優れた耐薬品性を持ちます。酸やアルカリ、有機溶剤など、幅広い薬品に対して高い耐性を示し、一般的な樹脂では使用が難しい薬液環境でも使用できます。これは、炭素とフッ素の強固な結合によって形成された化学的に安定した分子構造によるものです。そのため、化学プラントの配管やポンプ、バルブ、シール、半導体製造装置など、腐食性の高い薬品を扱う部品に利用されています。例外として、溶融アルカリ金属や高温高圧下のフッ素ガスなど、極めて反応性の高い一部の物質には侵されることが知られています。
耐候性が高い
炭素-フッ素結合の結合エネルギーが高く、紫外線や酸素、オゾンによる分子鎖の切断が起こりにくいため、屋外環境での長期使用においても劣化しにくい耐候性を備えています。一般的な樹脂と比較して、紫外線による変色や物性低下が起こりにくい材料です。そのため、屋外で使用する部品やシール材、電線・ケーブル、建築用膜材などに利用されています。高い耐候性と耐熱性を兼ね備えているため、温度変化や紫外線への曝露がある環境でも長期間の使用が期待できます。
体積抵抗率が非常に高い
優れた電気絶縁性を持つ材料です。体積抵抗率が非常に高く、誘電率や誘電正接も小さいため、電気を通しにくいだけでなく、高周波領域でも優れた電気特性を示します。また、温度や周波数による電気特性の変化も比較的小さいことから、電線・ケーブルの絶縁材やコネクタ、電子部品、高周波回路などに使用されています。特に、高周波信号を扱う用途では、PTFEの低誘電率・低誘電正接がメリットになります。
吸水率が低い
吸水率が0.01%未満と非常に低く、水分をほとんど吸収しません。そのため、吸水による膨潤や寸法変化が起こりにくく、水や湿気の影響を受ける環境でも安定した寸法を維持しやすい材料です。
難燃性
UL94規格 V-0(※)の非常に優れた難燃性を持ち、燃えにくく、自己消火性を示します。そのため、難燃性が求められる電線・ケーブルの被覆材や電子部品、産業機器などに使用されています。ただし、難燃性に優れる一方、高温では熱分解するため、400℃以上の高温下では分解し、フッ化水素などの有毒ガスが発生する可能性があるため注意が必要です。
※採用する材料については、メーカーの仕様書・試験データをご確認ください。
PTFE材質選定上の注意点
熱膨張が大きい
PTFEは、金属や他のエンジニアリングプラスチックと比較して線膨張係数が大きく、温度変化による寸法変化が生じやすい材料です。特に高温環境では膨張による寸法変化が大きくなるため、高い寸法精度が求められる部品では注意が必要です。また、温度変化を繰り返す用途では、膨張・収縮によって相手部品とのクリアランスが変化する可能性があります。
耐摩耗性が低い
摩擦係数が非常に小さい一方で、標準グレードのPTFEの耐摩耗性は比較的低いという特徴があります。そのため、摩耗量を抑える必要がある用途では、ガラス繊維やカーボン、グラファイトなどを配合して耐摩耗性を高めた充填PTFEが使用されます。
機械的強度・剛性が低い
PTFEは、一般的なエンジニアリングプラスチックと比較して機械的強度や剛性が低いです。特に高温になるほど機械的特性が低下するため、荷重がかかる構造部品では注意が必要です。そのため、荷重を支える構造部材としての使用には適さず、シール材や摺動部品など、強度よりも化学的・電気的特性を重視する用途に用いられるのが一般的です。強度が必要な箇所では、充填材による補強や金属部品との併用が検討されます。
クリープ変形しやすい
長時間にわたって荷重が加わると、時間の経過とともに変形するクリープが起こりやすい材料です。特に高温環境ではクリープが進行しやすく、継続的に圧縮荷重がかかる部品では注意が必要です。クリープによって締結力やシール性能が低下したり、部品の寸法が変化したりする可能性があります。長期間荷重がかかる用途では、使用温度や荷重を考慮し、充填材入りPTFEの採用や形状の工夫などを検討することが重要です。
材料・加工コストが高い
一般的な汎用樹脂と比較して材料価格が高く、加工コストも高くなりやすい材料です。PTFEは熱可塑性樹脂ですが、溶融粘度が非常に高いため、一般的な熱可塑性樹脂のように溶融させて容易に成形することが難しく、粉末を圧縮成形した後に焼成する方法などが用いられます。また、切削加工では材料の変形や熱膨張を考慮した加工が必要になるため、加工条件によってはコストが増加します。耐薬品性や絶縁性などの特性を活かした高付加価値用途に限定して採用されることが多い材料です。
PTFEの種類
PTFEは、標準グレードの他に各種性能を強化したグレードがあります。
グレード・種類 | 特徴 |
|---|---|
バージンPTFE(無充填PTFE) | 耐熱性・耐薬品性・低摩擦性・電気絶縁性に優れる。 |
ガラス繊維強化グレード | ガラス繊維の配合により、機械的強度・耐摩耗性・寸法安定性などを向上させている。 |
カーボン充填PTFE | カーボンの配合により、耐摩耗性や機械的特性、クリープ特性などを改善している。 |
グラファイト充填PTFE | グラファイトの配合により、耐摩耗性や摺動特性を向上させている。 |
ポリイミド配合PTFE | ポリイミドの配合により、耐摩耗性や耐荷重性、クリープ特性などを改善している。 |
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