粉末焼結方式(SLS)方式とは | メリットや対応材質を徹底解説
最終更新日:2026/7/27
本記事の要点
粉末焼結方式(SLS)は粉末状の樹脂材料に高出力レーザーを照射して焼結・積層する造形方式であり、射出成形品に近い高い機械的強度を備えた部品を製作できる。
未焼結の周囲の粉末が造形物を支える役割を果たすためサポート材が不要であり、複雑な内部構造や中空形状も一体造形できる。
表面は多孔質で粉っぽくざらついた質感に仕上がるため、滑らかさや光沢が必要な場合は研磨などの二次加工を要する。
粉末焼結方式(SLS)とは
粉末焼結方式とは、パウダーベッド(粉末床)に敷き詰められた粉末状の材料に対し、高出力のレーザーを照射して選択的に焼結・積層していく3Dプリンターの造形方式です。樹脂材料を用いる場合は一般的にSLS方式(選択的レーザー焼結)、金属材料を用いる場合はSLM方式(選択的レーザー溶融)と呼ばれ、用途や材質に応じて使い分けられています。
どちらの方式も、レーザーを照射して1層分の形状を焼き固めた後、ステージが1層分下がり、新しい粉末を敷き詰めて再びレーザーを照射する工程を繰り返すことで立体物を造形します。レーザーのスポット径は、熱溶解積層(FDM)方式のノズル径よりも極めて細く絞り込むことができるため、より高精細で微小な造形や、複雑な形状の再現を得意としています。
設計・開発視点でのSLS方式のメリット
部品試作や小ロット生産においてSLS方式を選択するメリットは、主に以下の2点に集約されます。
サポート材が不要で複雑な形状に対応可能
FDM方式や光造形(SLA)方式では、中空構造やオーバーハング(宙に浮いた部分)を造形する際に、形状が崩れないよう支えるサポート材が必須です。一方のSLS方式では、周囲の未焼結の粉末が造形物を支える役割を果たすため、サポート材を必要としません(※高密度な金属を扱うSLM方式ではサポート材が必要です)。
これにより、サポート材を除去する手間とリスクが省けるだけでなく、切削加工や他の3Dプリント方式では不可能な「複雑な内部構造」「アンダーカット」「組み立て済みの可動部品」も一体で造形することが可能です。
実製品に匹敵する高い強度と耐久性
粉末を熱エネルギーで強固に結合させるため、他の3Dプリンター方式と比較して層間の接着力が強く、非常に高い強度・耐久性を持ちます。樹脂を溶かして押し固めるFDM方式などに比べ、造形物の強度に方向性(異方性)が出にくく、安定した物性を得ることができます。
そのため、単なるデザイン・形状確認のプロトタイプに留まらず、実際に荷重や応力がかかる機能検証用の試作品や、小ロットの最終製品としても十分に使用可能です。
粉末焼結方式(SLS)選定時の注意点
一方で、設計実務においてSLS方式を採用するにあたっては、以下の仕様上の制約や特性をあらかじめ考慮した設計が求められます。
表面のざらつき(面粗度)
粉末を焼き固めるという加工の特性上、造形物の表面は多孔質になり、粉っぽくざらざらとした質感(梨地のような仕上がり)になります。外観部品として滑らかな表面や光沢が要求される場合は、光造形方式による出力が適しているケースもあります。SLS方式の高い強度を活かしつつ表面の仕上がりも追求したい場合は、バレル研磨や染色、コーティングといった後加工(表面仕上げ)によって対応することが可能です。
寸法精度と熱収縮(反り)への考慮
SLS方式は熱を利用して粉末を焼結するため、冷却時に熱収縮による反りや寸法変化が発生しやすくなります。一般的に寸法公差は±0.2〜0.3mm程度(形状やサイズによる)となるため、切削加工と同等の厳しい公差が求められる嵌合部などには、事前のクリアランス調整や二次加工を前提とした設計が必要です。
中空構造における粉抜き穴の設計
サポート材が不要で完全な中空構造を造形できるのがSLS方式の強みですが、造形直後は内部に未焼結の粉が詰まった状態になります。そのため、設計段階であらかじめ内部の粉を排出するための粉抜き穴(エスケープホール)を設けておく必要があります。
主な対応材質
SLS方式の3Dプリンターでは、主にエンジニアリングプラスチックとして優れた特性を持つPA(ポリアミド)が広く使用されます。要求されるスペックに応じて、以下の通り使い分けます。
材質 | 特徴・強み | 主な用途・適した部品 |
|---|---|---|
ナイロン12(PA12) | 強度・剛性・耐熱性・耐薬品性のバランスが良い汎用材 | ハウジング、治具、機能検証用プロトタイプ |
ナイロン11(PA11) | PA12と比較して高い耐衝撃性と柔軟性(靭性)を持つ | スナップフィット構造、ヒンジ、曲げ耐性が必要な部品 |
ガラス入りナイロン(PA-GF) | ナイロンにガラスビーズを配合し、極めて高い剛性と耐熱性を持つ | 高温環境下の部品、高い荷重・応力がかかる構造部品 |
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