ホームkeyboard_arrow_right参考資料keyboard_arrow_right切削・3Dプリント 設計ガイドkeyboard_arrow_right

二相ステンレス鋼とは?特徴と加工のポイント

二相ステンレス鋼とは?特徴と加工のポイント

最終更新日:2026/9/3

本記事の要点

  1. 二相ステンレス鋼は、オーステナイト系とフェライト系の金属組織を1:1で混合し、両者の長所を掛け合わせたステンレス鋼である。

  2. 汎用的なオーステナイト系(SUS304等)と比較して約2倍の耐力(降伏強度)を持ち、優れた耐応力腐食割れ性と耐孔食性を発揮する。

  3. 一方で、難削材であり加工硬化が起きやすいことや、500℃前後での高温環境下では脆化(475℃脆性)が起こる点に注意が必要である。


二相ステンレス鋼とは

二相ステンレス鋼とは、オーステナイト系ステンレスとフェライト系ステンレスを1:1の割合で二相混合したステンレス鋼を指します。両方の金属組織を持つことで、互いの長所を掛け合わせた優れた物理的性質を持っています。

主要成分は鉄以外に、クロムを約20〜30%、ニッケルを1〜10%程度含有し、鋼種によってはモリブデンや窒素、銅なども添加されます。オーステナイト系に比べると高価なニッケルの含有量が少なく、フェライト系が含有しないニッケルを少量含むハイブリッドなステンレスとも言えます。

高い強度と優れた耐食性が強みで、水門、トンネル、下水道設備、海水淡水化プラント、工業用水や海水を用いた熱交換器、排煙脱硫装置、ケミカルタンカーなど、過酷な環境や塩化物イオンを含むプロセス環境に接する機器で広く採用されています。

JIS規格においては、SUS329J1、SUS329J3L、SUS329J4Lなどが二相系ステンレス鋼に分類されます。

二相ステンレス鋼の特徴

オーステナイト系の約2倍の高強度

二相ステンレス鋼の大きな特徴はその高い機械的強度にあります。汎用的なオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304やSUS316)と比較して、構造設計の基準となる「耐力(降伏強度)」が約2倍という特徴を持ちます。また、引張強さについてもオーステナイト系に比べ二相ステンレスの方が優れています。

高い強度を活かすことで、部品の薄肉化による軽量化や、材料コストの削減といった設計上のメリットを生み出すことが可能です。

優れた耐食性と耐応力腐食割れ性

二相ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレスよりも耐孔食性(局所的な腐食に対する耐性)および耐応力腐食割れ性(※)に優れています。これは、クロム濃度とモリブデン濃度が高く、強固な不動態皮膜を形成できるためです。

SUS304やSUS316は、塩化物イオンを含む中性水溶液中で応力と熱が加わると「塩化物応力腐食割れ」が発生するリスクがありますが、二相ステンレス鋼は割れ発生の限界温度が高く、同様の塩化物環境下でも安定した性能を発揮します。

※応力腐食割れ:引張応力と腐食環境が同時に作用することで、外観上ほとんど腐食が見られないまま金属に亀裂が発生・進展する現象

レアメタル含有量の少なさによる価格安定性

二相ステンレス鋼は、SUS304やSUS316などと比較してやや高価な材料ではありますが、価格変動が激しいニッケルやモリブデンなどのレアメタル含有量が比較的少ないという特徴があります。そのため、世界情勢に伴う原料価格変動のリスクが低く、中長期的なプロジェクトにおける調達コストの安定化に寄与します。

代表的なステンレス鋼との比較

設計時の材料選定の目安として、オーステナイト系(SUS304、SUS316)と二相系(SUS329J4L)の主な特性を比較します。

鋼種

組織

耐力 (N/mm2)

引張強さ (N/mm2)

塩化物応力腐食割れの限界温度

主な特徴

SUS304

オーステナイト系

205以上

520以上

約50℃

最も汎用的なステンレス。加工性に優れるが耐応力腐食割れに劣る。

SUS316

オーステナイト系

205以上

520以上

約60℃

モリブデン添加によりSUS304より耐海水性・耐食性が向上。

SUS329J4L

二相系

450以上

620以上

180℃〜200℃

耐力がオーステナイト系の約2倍。極めて高い耐食性を持つ。

上記の数値(耐力、引張強さ、限界温度など)は、JIS規格に基づく一般的な一例または目安です。実際の物性値は条件により変動します。設計時には必ず材料メーカーのミルシートや詳細な技術資料をご確認ください。

二相ステンレス鋼の注意点

優れた特性を持つ二相ステンレスですが、設計や加工の現場においては以下の要素に注意する必要があります。

高温環境下での強度低下と脆化(475℃脆性)

二相ステンレス鋼は、500℃前後以上の高温環境下で急激な引張強さの低下と脆化(フェライト相の脆化現象)が起こります。そのため、高温環境での長期使用には不向きであり、設計時は使用環境の温度条件を考慮して材料として選択する必要があります。

切削加工性の悪さと加工硬化のリスク

二相ステンレスは高い強度と靭性を持ち、また、加工によって表面が硬くなる「加工硬化」も起きやすい材料で、切削加工時には工具の摩耗や欠けが激しく進行します。難削材であるため、設計時には過度な薄肉形状や不要な深穴加工を避ける配慮が必要です。また、安定した品質と納期を確保するためには、難削材加工のノウハウを持つ加工業者へ依頼することが必要です。


二相ステンレスの材料選定・切削加工はユモパーツにお任せください

YUMO PARTS(ユモパーツ)では、各種ステンレス、アルミ合金、モリブデン、チタンなどの金属をはじめ、PEEKやPOM、MCナイロンなどのエンジニアリングプラスチックまで、200種類以上の材質に対応した加工実績があります。

本記事で解説した二相ステンレスなどの難削材加工でお困りの際は、ユモパーツへご相談ください。切削加工の豊富な実績と安定した技術で、試作から本製作までの最適解をご提案します。

仕様要件に合わせた最適なアプローチをご提案いたしますので、ご質問やご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

事業内容

執筆者:湯本電機株式会社

金属・樹脂の切削加工と3Dプリントを軸に、試作・開発段階の部品加工に特化したエンジニアリングパートナー。年間76,738枚を超える図面見積実績に基づき、樹脂から難削金属まで286種類以上の材質に対応。単なる受託加工に留まらず、蓄積された膨大な加工データを背景とした「コストダウン提案」や「加工法最適化」に強みを持つ。

最短2時間の高速見積もり回答体制を敷き、大手メーカーの設計・開発部門から、学生フォーミュラ・ロボコン等の次世代エンジニアまで、難易度の高いものづくりを技術面からバックアップしている。

加工事例を見る