金型用ステンレス鋼HPM38とは? | 特徴・材質選定上の注意点を解説
最終更新日:2026/8/31
本記事の要点
HPM38は13Cr(クロム)系含Mo(モリブデン)の材料で、耐食性と鏡面仕上性、寸法安定性に優れたプラスチック金型用ステンレス鋼である。
29〜33HRCのプリハードン状態で供給されるため、切削加工後の熱処理工程が不要となり、納期短縮とコスト削減に寄与する。
熱処理不要による寸法安定性が高精度加工に貢献する一方、高温環境下では性能が低下するため、用途に応じた材料選定が重要である。
HPM38とは
HPM38は、株式会社プロテリアル(旧:日立金属株式会社)が開発したプラスチック金型用のステンレス鋼です。ベースとなるSUS420J2を改良した13Cr(クロム)系含Mo(モリブデン)の材料であり、精密プラスチック成形型の分野で広く採用されています。
HPM38はプリハードン鋼(硬度を調整するため、あらかじめ熱処理が済んだ状態の金属材料)として出荷されるため、一般的な炭素鋼などで必要とされる切削加工後の焼き入れ・焼き戻しといった熱処理工程を省略できるのが強みです。
HPM38の特徴
焼入れ処理不要による納期短縮とコスト削減
HPM38は、出荷時点で29〜33HRCの硬度を持つプリハードン状態となっています。中程度の硬度に調質されているため、そのままの状態で切削加工を行うことが可能です。熱処理工程自体を省くことができるため、トータルリードタイムの短縮や加工コストの削減に直結します。
優れた耐食性による容易な保守管理
ベース材であるSUS420J2と同等以上の高い耐食性を誇ります。金型の保管時や冷却水回路において錆(サビ)が発生しにくいため、メンテナンスや保管・管理の工数を大幅に削減できます。特に、湿度の高い環境でも錆が発生しにくく、適切な防錆管理を行うことで良好な状態を維持しやすい材料です。
高い鏡面仕上性による高意匠性の実現
精密プラスチック成形において重要な「金型表面の滑らかさ」を担保する、非常に優れた鏡面仕上性を備えています。透明品成形型(アクリルやポリカーボネートなど)や、高い意匠性が求められる製品の金型鋼材として最適です。
寸法安定性による高精度な製品成形
HPM38はプリハードン材として供給されるため、通常は焼入れ・焼戻しなどの熱処理が不要です。そのため、熱処理による変形や寸法変化のリスクを抑えることができ、高い寸法精度が求められる精密金型の製作に適しています。また加工後の修正工数を削減できるため、品質の安定化や生産効率の向上にも貢献します。
高温環境下での性能低下
高温環境下では硬度低下や特性変化のリスクがあるため、高温下で繰り返し使用される環境では、硬さや寸法精度の維持が難しくなります。高温強度や耐熱性を重視する場合は他の材質を検討するなど、使用環境や要求性能に応じて材料を選定することが重要です。
HPM38の化学成分と機械的性質・物性値(参考値)
化学成分
元素 | C | Si | Mn | Cr | Mo |
|---|---|---|---|---|---|
含有率(%) | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 13.5 | 0.6 |
機械的性質・物性値
項目 | 数値・データ |
|---|---|
硬度(プリハードン状態) | 29〜33 HRC |
硬度(焼入れ焼戻し状態) | 50〜55 HRC |
引張強度 (20℃) | 1910 MPa |
0.2%耐力 | 1620 MPa |
伸び / 絞り | 伸び: 13% / 絞り: 35% |
熱膨張係数
温度範囲 | RT〜100℃ | RT〜200℃ | RT〜300℃ | RT〜400℃ |
|---|---|---|---|---|
熱膨張係数 (×10⁻⁶/℃) | 10.4 | 11.1 | 11.5 | 11.8 |
熱伝導率
温度 | 20℃ | 100℃ | 200℃ | 300℃ | 400℃ |
|---|---|---|---|---|---|
熱伝導率 | 22.1 | 25.5 | 26.7 | 28.5 | 29.6 |
※記載している化学成分、物理的性質、および機械的性質の各数値は、一般的な一例(代表値)を示すものであり、保証値ではありません。実設計に際しては、必ず材料メーカーの発行するミルシートやJIS規格値をご参照ください。
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