POMへの材質変更でプローブガイドの干渉・折損トラブルを解決
最終更新日:2026/8/4
樹脂の小径深穴加工におけるプローブ折損トラブルと原因究明
機械部品の設計において、樹脂に対する微細な深穴加工は難易度が高く、材質の特性が直進性や仕上がり精度に直結します。今回ご紹介するのは、もともとPP(ポリプロピレン)製で使用されていたプローブ用ガイド治具に関するトラブルの解決事例です。
お客さまからは「Φ1の穴にプローブを通す際、内部で干渉して折れてしまうため改善したい」とのご相談をいただきました。ヒアリング段階では破損の根本原因が不明だったため、まずは同じ寸法・材質の端材を用いて貫通穴の試験品を製作し、現場での検証を行いました。
切削熱によるPPの内部変形メカニズム
検証の結果、トラブルの引き金となっていたのは、小径深穴加工時に発生する切削熱の逃げにくさでした。
穴深さがドリル径に対して大きい深穴加工では、切り屑の排出性が低下します。PPは樹脂の中でも比較的粘りが強く、切削時に刃物にまとわりつきやすい特性があります。そのため、切り屑がドリル溝に詰まって摩擦熱がこもりやすく、部品内部が局所的に熱膨張・変形を起こします。
その結果、穴が真っ直ぐ形成されず、プローブが治具内部で物理的に干渉して折損につながっていたことが判明しました。
解決策:寸法安定性に優れるPOMへの材質変更
この熱変形の問題を解決するため、YUMO PARTS(ユモパーツ)ではPPよりも熱膨張の影響を受けにくく、寸法安定性に優れるPOMへの変更をご提案しました。
PPとPOMの特性・加工性比較
以下の表は、今回のケースにおけるPPとPOMの加工特性を比較したものです。
特性 / 材質 | PP(ポリプロピレン) | POM(ポリアセタール) |
|---|---|---|
切削性(快削性) | △(粘りが強く切り屑が繋がりやすい) | ◎(切り屑が細かく分断され排出性が高い) |
深穴加工の直進性 | △(熱変形により曲がりやすい) | ◎(熱影響が少なく寸法が安定する) |
線膨張係数 (10⁻⁵/℃) | 約 10〜15 | 約 9〜12 |
耐薬品性(酸・アルカリ) | ◎(幅広い薬品に耐性あり) | △(強酸に弱い) |
※上記の線膨張係数などの物性値や加工性の評価は一般的な一例です。樹脂の具体的なグレード、成形方法(押し出し・キャスト等)、および切削時の送り速度やクーラントの有無といった加工条件により実際の数値・結果は変動します。実際の設計にあたっては、必ず各材料メーカーの公式な物性表をご確認ください。
提案の結果
POMは極めて快削性に優れており、切り屑が細かく分断されるため摩擦熱がこもりにくいのが特徴です。熱変形や加工応力が残りにくいため、Φ1のようなシビアな細径深穴加工と非常に相性が良い材質です。
実際にPOMで製作したところ内部干渉が劇的に改善され、プローブの折損なく安定して使用できるようになりました。
現場の設計者が知っておくべきPOMへの変更時の注意点
加工性に優れるPOMですが、材質変更を行う際は以下の点にも注意を払う必要があります。
耐候性の低さ: POMは紫外線に弱く、屋外で使用すると劣化して強度が低下します。屋外用途の場合は、カーボンブラックを添加した黒色POM(耐候性グレード)を選定する必要があります。
耐薬品性の違い: PPは非常に優れた耐薬品性を持ちますが、POMは強酸に対して耐性が劣ります。薬液に触れる環境でのガイド治具として使用する場合は、POMではなく耐薬品性と寸法安定性を両立する別のエンジニアリングプラスチック(PETやPPSなど)への変更も視野に入れる必要があります。
材質変更は加工のしやすさだけでなく、最終的な製品の使用環境(温度、紫外線、薬品)を総合的に判断して行うことが重要です。
原因不明のトラブルも、実際の加工検証から最適な材質・工法をご提案します
「図面通りに製作しているのにうまく機能しない」「部品破損の原因が分からない」といったトラブルの背景には、今回のように加工時の熱や材質の特性が複雑に絡み合っているケースが多く存在します。
YUMO PARTS(ユモパーツ)では、単に図面を受け取って加工するだけでなく、端材を用いた事前の切削検証や、実際の加工メカニズムに基づいた「材質変更」「加工条件の最適化」を積極的に行っています。設計・開発段階での精度不良や材質選定でお悩みなら、ぜひお気軽にご相談ください。
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