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POMの切削加工 | 微細加工のための特性と選定ポイント

POMの切削加工 | 微細加工のための特性と選定ポイント

最終更新日:2026/7/15

本記事の要点

  1. POMは自己潤滑性・耐摩耗性・低吸水性に優れ、快削でバリも出にくいため、摺動部品や精密部品の切削加工に適した材料である。

  2. 一方で他の樹脂材質と比較して熱による寸法変化を起こしやすい特性を持つため、切削条件を誤ると精度不良につながりやすく、加工時の温度管理が品質を左右する。

  3. 標準グレードのPOMは耐候性が低く酸素指数も15と低いため屋外使用や火気周辺での使用には不向きであり、用途によっては耐候や難燃グレードなど代替グレードの検討が必要である。


POM(ポリアセタール)とは

POM(ポリオキシメチレン、通称ポリアセタール)は、PA(ポリアミド)・PC(ポリカーボネート)などと並ぶ5大エンジニアリングプラスチックの一つです。メチル基(CH₂)と酸素(O)が交互に規則正しく並んだ分子構造を持ち、結晶化度が高いことがエンプラの中でも際立った特徴です。この結晶構造の高さが、優れた機械的強度・耐摩耗性・自己潤滑性の源になっています。

汎用性が高く、樹脂切削加工においてはMCナイロンと並んで材質検討の初期段階で候補に挙がることが多い、「樹脂切削の基準材料」といえる存在です。

POMの物性値

項目

単位

試験法

ホモポリマー

コポリマー

比重

-

D792

1.42

1.41

引張強さ

MPa

D638

75

62

破断時伸び

%

D638

30

50

衝撃強さ(アイゾット ノッチ付)

J/m

D256

80

100

硬度(ロックウェル)

-

D785

R120

R115

線膨張係数

×10-5/℃

D696

9

10

連続使用温度

-

90前後

90前後

融点

-

約175

約165

体積抵抗率

Ω·cm

D257

6×10^12

6×10^12

絶縁破壊強さ

KV/mm

D149

13~15

20

※上記数値は一般的なグレードにおける代表値の一例であり、メーカーやグレードによって変動します。実際の設計・材質選定にあたっては、必ず採用予定メーカーの最新版物性表で数値を確認してください。

POMの特徴とメリット

POMが設計開発の現場で選定される理由は、主に以下の6点に集約されます。

  • 優れた機械的強度と耐摩耗性:結晶化度の高さに由来し、ギヤや軸受など摺動部品に適している。

  • 自己潤滑性:グリスを使わなくても滑らかな動きが得られ、摩擦係数が低い。

  • 低吸水性:吸水・吸湿による寸法変化が起こりにくく、寸法安定性を求められる精密部品に向く。

  • 絶縁性:体積抵抗率・絶縁破壊強さともに高く、電子機器部品にも対応可能。

  • 優れた耐薬品性:有機溶剤やオイル・グリスへの耐性が高い。

  • 優れたコストパフォーマンス:比較的入手性とコストに優れる。

加えて、POMは切削加工の現場において扱いやすい材料に分類されます。快削性に優れ、加工時にバリが発生しにくく、発生したバリも比較的容易に除去できるためです。また、切削面には光沢が出やすく、粘り強く破断しにくいため、加工中・使用中の割れや欠けも起こりにくい性質があります。

POMのグレード一覧

POMには標準グレードのほか、用途に応じて特定の性能を強化した各種グレードが存在します。設計要件に応じて、以下のグレードから最適なものを選定することができます。

グレード

特徴

主な用途例

標準グレード

バランスの取れた基本物性

汎用部品、ギヤ、ブッシュ

耐候性向上グレード

UV安定剤等により耐候性を強化

屋外設置部品、屋外機器カバー

摺動性改良グレード

摩擦係数をさらに低減

高頻度で摺動するカム・ガイド

ガラス繊維強化グレード

剛性・寸法安定性を強化(伸びは低下)

高剛性が求められる構造部品

医療用グレード

生体適合性等の規格に対応

医療機器部品

炭素繊維強化(導電)グレード

導電性を付与

静電気対策が必要な部品

高面圧摺動グレード

高荷重下での摺動特性を強化

高面圧がかかる軸受・スライド部品

材質選定上の注意点

POMは優れた材料である一方で、以下のような特有の弱点も持ちます。設計段階でこれらを理解し、必要に応じて代替グレードや設計上の対策を検討することが、後工程での手戻りを防ぐポイントとなります。

耐候性が低い

標準グレードのPOMは紫外線による劣化(黄変・強度低下)が起こりやすく、耐候性が低い性質があります。屋外での長期使用が想定される部品には不向きであり、屋外用途では耐候性向上グレードへの変更、または塗装等の表面処理による保護を検討する必要があります。

燃えやすく、難燃化が難しい

POMは分子構造中に酸素原子を含むため、酸素指数(材料が燃焼を維持するために必要な最低酸素濃度)が15程度と、樹脂材質の中でも特に低い部類に入ります。この数値の低さは「燃えやすさ」を意味し、POMは自己消火性(火から離すと自然に消える性質)が低く、難燃処理も一般に難しいとされます。火気の近くや高温環境での使用は避けるか、必要に応じて他材質との置き換えの検討が必要です。

グレードによって吸水率が逆転することがある

POMは吸水率が低い材質ですが、グレードによっては吸水率の高い材質と逆転するケースがあります。例えばPOMの高面圧摺動グレード(POM SW-01)とMCナイロンの摺動グレード(MC703HL)を比較すると、以下のようになります。

材質・グレード

吸水率(一例)

POM(高面圧摺動グレード:POM SW-01)

0.6%

MCナイロン(摺動グレード:MC703HL)

0.5%

※上記の吸水率はメーカー公表値の一例であり、ロットや測定条件によって変動することがあります。「POMだから吸水率が低い」と一律に判断せず、グレードごとの物性表を確認したうえで選定することが重要です。

POM切削加工時の現場ポイント

POMは快削材として知られますが、実際の加工現場では「削りやすい」ことと「精度が出しやすい」ことは必ずしもイコールではありません。特に注意したいのが、熱による寸法変化・変形です。

POMはガラス転移点が−50℃程度と低く、切削熱が蓄積すると局所的な軟化や熱膨張により寸法が狂いやすい側面があります。高精度な部品を安定して製作するためには、以下のような対策が有効です。

  • 工具の選定:切削抵抗を抑えるためにすくい角がポジティブに設定された切れ味の良い工具を用いる。

  • 工具管理:摩耗した刃物は摩擦熱を増大させる要因になるため、切れ味の劣化を見極めて早めに交換する。

  • 送りと切込み条件の最適化:切削熱の蓄積を抑えるため、送り速度や切込み量を調整する。

  • 冷却と除熱:エアブローや適切な切削条件により、加工点の温度上昇を抑制する。

こうした加工現場での温度管理・工具管理は、図面上の公差を実際に満たせるかどうかを左右する重要な要素です。そのため、加工条件次第で狙った精度が出ないケースがある点には注意が必要です。

まとめ

POMは自己潤滑性・耐摩耗性・低吸水性・快削性を兼ね備え、摺動部品や精密部品の切削加工材料として非常にバランスの良いエンジニアリングプラスチックです。

一方で、耐候性の低さ、燃えやすさ、グレードによる吸水率の逆転、加工時の熱による寸法変化など、設計・加工の両面で押さえておくべき注意点も存在します。

用途や使用環境、要求精度に応じてグレードと加工条件を適切に選定することが、POM活用の成否を分けるポイントです。


POMの精密切削加工なら、豊富な加工実績を持つユモパーツにお任せください

POMは扱いやすい材料である一方で、狙った精度を安定して出すには、熱による寸法変化を踏まえた工具選定や切削条件の作り込みが欠かせません。「図面通りの公差が本当に出るか」「屋外用途なので耐候グレードにすべきか」といった材質選定・加工条件に関する判断は、実際の加工データを持つパートナーに相談することで精度を高めることができます。

YUMO PARTS(ユモパーツ)では、POMをはじめとした樹脂切削加工による図面加工品を1個から製作するパーツメーカーです。MCナイロンUHMW-PEなど、200材質を超える多材質の加工実績を活かし、比較検討のためのお見積りや、グレード選定に関するご相談にも対応します。見積もり回答は最短2時間。設計中で図面が手元にない段階からでも、お気軽にお問い合わせください。

YUMO PARTS(ユモパーツ)のPOM切削加工事例。薄肉加工を含んだ精密加工をした図面加工品。

事業内容

執筆者:湯本電機株式会社

金属・樹脂の切削加工と3Dプリントを軸に、試作・開発段階の部品加工に特化したエンジニアリングパートナー。年間76,738枚を超える図面見積実績に基づき、アルミ・樹脂から難削材まで200種類以上の材質に対応。単なる受託加工に留まらず、蓄積された膨大な加工データを背景とした「コストダウン提案」や「加工法最適化」に強みを持つ。

最短2時間の高速見積もり回答体制を敷き、大手メーカーの設計・開発部門から、学生フォーミュラ・ロボコン等の次世代エンジニアまで、難易度の高いものづくりを技術面からバックアップしている。

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