PEEKの切削加工 | 最高水準の高機能樹脂を扱うための設計ポイント
最終更新日:2026/7/23
本記事の要点
PEEKは連続使用温度250℃前後、融点343℃前後という樹脂材質の中でも最高水準の耐熱性を持つスーパーエンプラである。
PEEKは引張強さ・耐薬品性が高水準で、濃硫酸を除くほとんどの酸・アルカリ・有機溶媒に耐性を示すが、グレードや使用条件によって数値は変動するため個別確認が必須である。
PEEKは高価であり、要求仕様に対してオーバースペックとなるケースがあるため、PPSやPOMなど代替樹脂との比較検討が材質選定の設計上重要となる。
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)とは
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は、樹脂材料の中でも最高レベルの耐熱性と機械的強度を誇るスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)の代表格です。
金属部品の樹脂化(軽量化)を検討する際や、過酷な環境下(高温、薬品、蒸気など)で使用される部品において、第一候補として検討される非常に信頼性の高い材質です。半導体製造装置、航空宇宙部品、自動車部品、医療機器など、高度なスペックが要求される産業で広く採用されています。
PEEKの物性値と代替候補材比較
比較項目 | PEEK | PPS | POM | PTFE |
|---|---|---|---|---|
主な特徴 | 樹脂最高峰の総合力 | PEEKに次ぐ耐熱・耐薬品性 | 加工性が良く安価 | 圧倒的な耐薬品性と滑り性 |
連続使用温度(目安) | 約250℃ | 約200℃ | 約80〜100℃ | 約260℃ |
機械的強度 | ◎(非常に高い) | 〇(高い・やや脆い) | 〇(汎用的) | △(柔らかい・変形しやすい) |
耐薬品性 | ◎(一部の強酸除く) | ◎ | △(酸に弱い) | ★(ほぼ全ての薬品に耐性) |
切削加工性 | 〇(反りに注意) | 〇(割れに注意) | ◎(非常に削りやすい) | △(柔らかく公差が出にくい) |
材料価格 | 非常に高価 | 高価 | 安価 | 高価 |
※上記数値は一般的なグレードにおける代表値の一例であり、メーカーやグレードによって変動します。実際の設計・材質選定にあたっては、必ず採用予定メーカーの最新版物性表で数値を確認してください。
PEEKの特徴とメリット
PEEKが設計開発の現場で選定される理由は、主に以下の5点に集約されます。
樹脂最高レベルの耐熱性と耐熱水性
PEEKの最大の強みは、連続使用温度が約240℃〜260℃と極めて高い点です。また、耐熱水性にも優れており、200~250℃の過酷な高温スチーム環境下においても、加水分解を起こすことなく連続使用が可能です。
高い機械的強度と耐摩耗性
引張強度や曲げ強度など、樹脂の中でトップクラスの機械的強度を持ちます。摩擦係数が低く耐摩耗性にも優れるため、摺動部品やギア・軸受などの摩耗が激しい部品にも適しています。
幅広い耐薬品性
多くの酸、アルカリ、有機溶剤に対して優れた耐性を示します。高温環境下で薬品にさらされるような、半導体洗浄装置などの部品に頻繁に用いられます。
高い寸法安定性
吸水率が極めて低く(0.1%程度)、湿度や水分の影響による寸法変化や劣化がほとんど発生しません。そのため、厳しい公差が求められる精密部品の切削加工に向いています。
優れた難燃性と低発煙性
自己消火性を持ち、燃えにくい(UL94 V-0クリア)という特徴があります。万が一燃焼した場合でも、有毒ガスや煙の発生量が非常に少ないため、航空機内装部品など安全基準が厳しい環境でも使用されます。
PEEKのグレード一覧
PEEKには標準グレードのほか、用途に応じて特定の性能を強化した各種グレードが存在します。設計要件に応じて、以下のグレードから最適なものを選定することができます。
グレード | 特徴 |
|---|---|
標準グレード | 高い靭性と伸び |
摺動グレード | 摩擦係数を下げて耐摩耗性を強化 |
ガラス繊維強化グレード | 剛性と耐熱性をさらに強化 |
炭素繊維強化グレード | 機械的強度を強化し導電性を付与 |
医療用グレード | 生体適合性等の規格に対応 |
材質選定上の注意点
PEEKは万能に見えますが、設計実務においてはいくつかの壁が存在します。設計段階でこれらを理解し、必要に応じて代替グレードや設計上の対策を検討することが、後工程での手戻りを防ぐポイントとなります。
材料コストが非常に高い
PEEKの材料単価は、一般的なエンプラ(POM等)の数十倍に達することもあります。「とりあえずスペックの高い樹脂だから」と安易に採用すると、部品コストが跳ね上がります。例えば要求される耐熱温度が200℃以下であればPPSを、100℃以下であればPOMへの代替を検討してください。また、軽量化が主目的であれば、樹脂ではなくアルミ合金(A5052等)を選択した方がコストを抑えられるケースもあります。
切削加工時の工具摩耗
寸法安定性が高いPEEKですが、材料製造時の内部応力が残っている場合、切削加工(特に薄肉加工や非対称な削り出し)を行うと、加工中や加工後に反りや変形が発生するリスクがあります。他材質と比べ加工ノウハウが必要であるため、PEEKの加工実績がどれだけあるかが加工業者選定ポイントとなります。また、ガラス・カーボン強化グレードは非常に硬く、刃物の著しい摩耗を引き起こし、加工費増の要因になります。
濃硫酸など一部の薬品には反応する
高い耐薬品性を持ちますが、全てに耐性があるわけではありません。濃硫酸、濃硝酸、フッ酸などの強力な酸化性の酸に対しては侵される性質があります。これらの薬品を使用する環境では、PEEKではなくPTFEなどのフッ素樹脂を検討するか、採用前にメーカーの耐薬品性リストを確認することが事故防止に繋がります。
PEEKの適切な材質選定と高精度切削加工はユモパーツにお任せください
YUMO PARTS(ユモパーツ)では、PEEKの切削加工による特注部品の製作を1個から承ります。見積もり回答は最短2時間。PPSやチタンなど、200材質以上の加工実績があります。
「連続使用温度や耐薬品性を踏まえてPEEKが本当に最適か迷っている」「PPSなど代替材質とのコスト比較をしたい」といった材質選定の段階からのご相談も歓迎しています。比較のためのお見積り、材料選定のご相談もお気軽にお問い合わせください。
\ 最適な解決策をご提案します /



