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POMの切削加工 | 微細加工のための特性と選定ポイント

POMの切削加工 | 微細加工のための特性と選定ポイント

最終更新日:2026/10/14

本記事の要点

  1. POMは自己潤滑性・耐摩耗性・低吸水性に優れ、快削でバリも出にくいため、摺動部品や精密部品の切削加工に適した材料である。

  2. 機械的強度に優れたエンジニアリングプラスチックであり、汎用プラスチックよりも高温・高負荷環境での使用が可能である。

  3. 標準グレードのPOMは耐候性が低く酸素指数も15と低いため屋外使用や火気周辺での使用には不向きであり、用途によっては耐候や難燃グレードなど代替グレードの検討が必要である。


POM(ポリアセタール)とは

POM(ポリオキシメチレン、通称ポリアセタール)は、PA(ポリアミド)・PC(ポリカーボネート)などと並ぶ5大エンジニアリングプラスチックの一つです。メチレン基(CH₂)と酸素(O)が交互に規則正しく並んだ分子構造を持ち、結晶化度が高いことがエンプラの中でも際立った特徴です。この結晶構造の高さが、優れた機械的強度・耐摩耗性・自己潤滑性の源になっています。

汎用性が高く、樹脂加工においてはMCナイロンと並んで材質検討の初期段階で候補に挙がることが多い、「樹脂切削の基準材料」といえる存在です。

POMの物性値

項目

単位

試験法

ホモポリマー

コポリマー

比重

-

D792

1.42

1.41

引張強さ

MPa

D638

75

62

破断時伸び

%

D638

30

50

衝撃強さ(アイゾット ノッチ付)

J/m

D256

80

100

硬度(ロックウェル)

-

D785

R120

R115

線膨張係数

×10-5/℃

D696

9

10

連続使用温度

℃

-

90前後

90前後

融点

℃

-

約175

約165

体積抵抗率

Ω·cm

D257

6×10^12

6×10^12

絶縁破壊強さ

KV/mm

D149

13~15

20

※上記数値は一般的なグレードにおける代表値の一例であり、メーカーやグレードによって変動します。実際の設計・材質選定にあたっては、必ず採用予定メーカーの最新版物性表で数値を確認してください。

POMの特徴とメリット

機械的強度が高い

樹脂の中でも機械的強度や剛性に優れた材料です。引張強度や曲げ強度が比較的高く、荷重がかかる機械部品にも使用できます。また、繰り返し荷重に対する耐疲労性にも優れているため、ギヤや軸受、ローラーなど、長期間にわたって機械的な負荷を受ける部品にも適しています。金属より軽量でありながら、実用的な強度を確保できる点も特徴です。

耐摩耗性に優れる

POMは耐摩耗性に優れ、摩擦係数も比較的小さいため、部品同士が接触・摺動する用途に適しています。自己潤滑性を持つことから、潤滑油やグリースを使用しにくい箇所でも使用しやすく、ギヤや軸受、ローラー、ガイド部品などに利用されています。

吸水性が小さく、寸法安定性に優れる

吸水性が小さいため、湿度や水分による寸法変化が比較的小さい材料です。寸法精度が求められるギヤや精密機械部品、摺動部品などに適しています。湿度変化のある環境でも寸法を安定させやすい点がメリットです。

耐薬品性に優れる

耐薬品性に優れており、油類やガソリン、アルコール類、弱酸・弱アルカリなどに対して比較的高い耐性を持ちます。そのため、薬品や油に触れる可能性がある機械部品や、自動車・産業機械などの部品に使用されています。ただし、強酸や強アルカリなどには影響を受ける場合があります。

コストパフォーマンスに優れる

機械的強度や耐摩耗性、寸法安定性、耐薬品性など、機械部品に求められる特性をバランスよく備えています。高性能なエンジニアリングプラスチックの中では比較的入手しやすく、材料コストと性能のバランスに優れる点がメリットです。

絶縁性に優れる

POMは電気を通しにくく、優れた電気絶縁性を持つ材料です。そのため、電気・電子機器の絶縁部品や、導電を避けたい機械部品などに使用されています。

POMのグレード一覧

POMには標準グレードのほか、用途に応じて特定の性能を強化した各種グレードが存在します。設計要件に応じて、以下のグレードから最適なものを選定することができます。

グレード

特徴

主な用途例

標準グレード

バランスの取れた基本物性

汎用部品、ギヤ、ブッシュ

耐候性向上グレード

UV安定剤等により耐候性を強化

屋外設置部品、屋外機器カバー

摺動性改良グレード

摩擦係数をさらに低減

高頻度で摺動するカム・ガイド

ガラス繊維強化グレード

剛性・寸法安定性を強化(伸びは低下)

高剛性が求められる構造部品

医療用グレード

生体適合性等の規格に対応

医療機器部品

炭素繊維強化(導電)グレード

導電性を付与

静電気対策が必要な部品

高面圧摺動グレード

高荷重下での摺動特性を強化

高面圧がかかる軸受・スライド部品

POM材質選定上の注意点

POMは優れた材料である一方で、以下のような特有の弱点も持ちます。設計段階でこれらを理解し、必要に応じて代替グレードや設計上の対策を検討することが、後工程での手戻りを防ぐポイントとなります。

耐候性が低い

標準グレードのPOMは紫外線による劣化(黄変・強度低下)が起こりやすく、耐候性が低い性質があります。屋外での長期使用が想定される部品には不向きであり、屋外用途では耐候性向上グレードへの変更、または塗装等の表面処理による保護を検討する必要があります。

燃えやすく、難燃化が難しい

POMは分子構造中に酸素原子を含むため、酸素指数(材料が燃焼を維持するために必要な最低酸素濃度)が15程度と、樹脂材質の中でも特に低い部類に入ります。この数値の低さは「燃えやすさ」を意味し、POMは自己消火性(火から離すと自然に消える性質)が低く、難燃処理も一般に難しいとされます。火気の近くや高温環境での使用は避けるか、必要に応じて他材質との置き換えの検討が必要です。

グレードによって吸水率が逆転することがある

POMは吸水率が低い材質ですが、グレードによっては吸水率の高い材質と逆転するケースがあります。例えばPOMの高面圧摺動グレード(POM SW-01)とMCナイロンの摺動グレード(MC703HL)を比較すると、以下のようになります。

材質・グレード

吸水率(一例)

POM(高面圧摺動グレード:POM SW-01)

0.6%

MCナイロン(摺動グレード:MC703HL)

0.5%

※上記の吸水率はメーカー公表値の一例であり、ロットや測定条件によって変動することがあります。「POMだから吸水率が低い」と一律に判断せず、グレードごとの物性表を確認したうえで選定することが重要です。

製造現場から見たPOM

POMは粘り強く破断しにくい特徴を持ち、加工・使用時の割れや欠けが発生しにくい扱いやすい材料です。また、快削でバリが発生しにくく、発生したバリも取ることが容易なため、精密部品の加工に向いています。切削加工後の切削面には光沢が出ます。

POMの快削性を活かした事例は「小径深穴加工におけるPPからPOMへの材質提案事例」をご覧ください。


POMの精密切削加工なら、豊富な加工実績を持つユモパーツにお任せください

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YUMO PARTS(ユモパーツ)のPOM切削加工事例。薄肉加工を含んだ精密加工をした図面加工品。

事業内容

執筆者:湯本電機株式会社

金属・樹脂の切削加工と3Dプリントを軸に、試作・開発段階の部品加工に特化したエンジニアリングパートナー。年間76,738枚を超える図面見積実績に基づき、樹脂から難削金属まで286種類以上の材質に対応。単なる受託加工に留まらず、蓄積された膨大な加工データを背景とした「コストダウン提案」や「加工法最適化」に強みを持つ。

最短2時間の高速見積もり回答体制を敷き、大手メーカーの設計・開発部門から、学生フォーミュラ・ロボコン等の次世代エンジニアまで、難易度の高いものづくりを技術面からバックアップしている。

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