部品の軽量化を実現する造形方法|インフィル構造の選び方
最終更新日:2026/8/3
本記事の要点
3Dプリントでの部品軽量化は、内部の充填率(インフィル密度)を下げることで、材料コストと造形時間を同時に削減しながら実現できる。
内部構造にはトライアングル、ハニカム、ジャイロイドなど複数のパターンがあり、方向による強度の出方や造形時間の傾向がそれぞれ異なる。
軽量化は強度低下やタップ加工など後加工の制約とトレードオフの関係にあるため、部品の要求荷重や用途に応じた充填率・パターンの選定が欠かせない。
モビリティ機器のバッテリー筐体やロボットアームの先端部品、ドローンのフレームなど、可動部や搭載機器には常に軽量化が求められます。部品の軽量化には、アルミや樹脂といった軽量材料への置き換えのほか、形状そのものを工夫して不要な質量を削る構造による軽量化というアプローチがあります。
3Dプリント(FDM方式)による部品加工では、この構造による軽量化を内部の充填率とパターンという2つの設定で柔軟に実現できます。実際、社内シミュレーションでは充填率を100%から20%に抑えると、材料コストは約4割、造形時間は約2時間の削減という結果が出ています。本記事では設計・開発者の方に向けて、3Dプリント部品の軽量化を叶える内部構造設計の考え方と、具体的な数値検証、採用時の注意点を解説します。
部品を軽量化する2つのアプローチ
材料の変更による軽量化
最も直接的な軽量化の方法は、より比重の小さい材料に置き換えることです。金属部品であればアルミやチタンへの変更、機能によっては金属から樹脂へ置き換えることで、大幅な軽量化が可能です。ただし材料変更は強度・耐熱性・耐薬品性など他の要求性能とのトレードオフを伴うため、置き換え前に十分な物性比較が必要です(各材料の特性は樹脂加工の材料選定ガイドもあわせてご参照ください)。
構造の工夫による軽量化
一方、材料を変えずに軽量化する方法が、部品内部の質量を減らす構造による軽量化です。切削加工では内部を複雑な中空形状にすることは加工上の制約が大きく、実現が難しいケースが少なくありません。これに対して3Dプリントは、内部に自在な空隙構造を作り込むことができます。この内部構造の密度や形状を調整する仕組みが、「充填率」と「内部構造(インフィルパターン)」です。
充填率とは
充填率とは、造形物内部にどれだけ材料を詰めるかを示す密度設定です。充填率100%はいわゆるソリッド構造で、内部にも隙間なく材料が詰まった状態を指します。これに対して充填率を100%未満に設定すると、内部に格子状の隙間が生まれるスパース構造になります。
充填率と造形物の特性には、以下のようなトレードオフの関係があります。
充填率 | 強度 | 材料使用量・コスト | 造形時間 | 反りやすさ(ABS・ナイロン等) |
|---|---|---|---|---|
高い(100%に近い) | 高い | 多い・高い | 長い | 内部応力が蓄積しやすく、反りが発生しやすい傾向 |
低い(20〜30%程度) | 低い | 少ない・低い | 短い | 内部応力が小さく、反りを抑えやすい傾向 |
※上記は一般的な傾向であり、実際の強度や反りの度合いは、使用する材料、形状・肉厚、プリンターの積層条件によって大きく変動します。量産や機能部品への適用にあたっては、必ず試作による確認を行ってください。
試作段階で形状や組み付け確認のみを目的とする場合、強度が重要でなければ充填率20〜30%程度でも機能します。一方、実使用を想定した機能部品では、要求される耐久性に応じて充填率を上げる必要があります。
内部構造(インフィルパターン)の種類と特徴
充填率と合わせて重要になるのが、内部の隙間をどのような形状で作るかというインフィルパターンです。パターンによって強度の出やすい方向や造形のしやすさが異なります。
パターン | 断面の形状 | 強度の傾向 | 造形時間の傾向 | 主な適用シーン |
|---|---|---|---|---|
トライアングル | 三角形の連続 | 縦・横方向にバランス良く強度が出やすい | 標準的 | 汎用試作、形状・組付け確認 |
ハニカム | 六角形の連続 | 積層方向の強度に優れる傾向がある | ライン交点で樹脂が重なりやすく、他パターンより長くなる場合がある | 積層方向の強度を重視する部品 |
ジャイロイド | 三次元的な曲面が交差する構造 | 特定の方向に依存せず、ほぼ均等な強度が出やすい(等方性) | 連続した軌道で比較的短時間 | 多方向から荷重・衝撃がかかる部品 |
直線・長方形 | 直線または長方形の反復 | 強度は控えめ | ノズルの動きが単純で最も短時間になりやすい | 強度を求めない軽量な確認用モデル |
※上記は各パターンの一般的な傾向であり、断定的な優劣を示すものではありません。特にハニカムはライン同士の交点で樹脂が重なる特性上、機種やスライサーの設定によっては想定より材料使用量や造形時間が増えるケースがあります。
充填率・内部構造別の比較検証データ
充填率とインフィルパターンの違いによって、実際にどの程度軽量化やコスト削減ができるのか。同一形状(レンチ形状のモデル)を用いた社内シミュレーションの一例を紹介します。
設定 | 材料の体積 | 材料コスト(目安) | 造形時間(目安) |
|---|---|---|---|
ソリッド構造(充填率100%) | 44.57cc | 2,061円 | 6時間32分 |
低充填率(充填率20%・斜線パターン) | 25.74cc | 1,190円 | 4時間30分 |
スパース構造(トライアングル) | 28.24cc | 1,305円 | 4時間48分 |
スパース構造(ハニカム) | 23.96cc | 1,108円 | 4時間29分 |
このシミュレーションでは、充填率を100%から20%に下げることで、材料コストは約4割削減され、造形時間は約2時間短縮されました。同程度の低充填率であっても、パターンの違いによって材料コストや造形時間に差が出ることが分かります。
※上記の数値は、特定の形状・材料・プリンター機種における社内シミュレーションの一例です。実際の削減量は部品の形状・サイズ、肉厚設計、使用材料、プリンターやスライサーの設定によって変動するため、目安としてご活用ください。
内部構造による軽量化の副次的なメリット
充填率を下げて内部構造を採用することで得られるメリットは、軽量化だけではありません。
材料コストの削減:使用する樹脂量が減るため、材料費を抑えられます。
造形時間の短縮:積層する材料が減ることで、造形時間そのものも短くなります。
反りの抑制:内部に隙間があることで冷却時の収縮による内部応力が緩和され、ABSやナイロンなど反りが発生しやすい材料でも造形難易度を下げやすくなります。
ただし反りへの影響度は材料や造形環境によって差があるため、反り対策を目的に充填率を調整する場合も事前の試作確認をおすすめします。
内部構造を調整する際の2つの注意点
強度が低下する
内部構造は隙間を作ることで軽量化する仕組みである以上、ソリッド構造と比べて強度が低下する点は避けられません。継続的な荷重がかかる部品や、繰り返し応力がかかる摺動部品などに低充填率の構造をそのまま適用すると、想定より早く破損するリスクがあります。強度が必要な部品には、充填率を引き上げる、あるいは強度の出やすいパターン(ハニカムなど)を選ぶといった調整が必要です。
タップ加工など後加工が難しくなる
内部が格子状になっているため、造形後にねじ穴のタップ加工や追加のドリル加工を行う際、内部の空隙に加工が到達してしまいねじ山が十分に確保できない場合があります。ねじ穴やインサートが必要な箇所がある部品では、該当箇所だけ充填率を部分的に引き上げる「ローカルソリッド化」を行うことで、軽量化とねじ穴の強度を両立できます。設計段階で後加工が必要な箇所を明確にし、その周辺だけ密度を上げておくことが手戻りを防ぐポイントです。
用途別 充填率とパターンの選び方
用途 | 充填率の目安 | おすすめパターン | ポイント |
|---|---|---|---|
形状・組付け確認用の試作 | 15〜20% | トライアングル/直線 | 最速・最安。強度は重視しない |
軽度な荷重がかかる機能試験部品 | 20〜30% | ジャイロイド | 多方向からの荷重に対応しやすい |
中〜高強度が必要な機能部品 | 40%以上、または部分的にソリッド | ハニカム/ソリッド併用 | 積層方向の強度を重視 |
ねじ穴・タップ加工がある部位 | 該当箇所のみ充填率を引き上げ | ローカルソリッド化 | 後加工トラブルを防止 |
※上記は一般的な設計の目安です。最終的な充填率・パターンの選定は、要求される荷重条件、使用環境、材料特性を踏まえたうえで、試作による強度確認を行うことをおすすめします。
よくある質問
Q. 3Dプリントで部品を軽量化するにはどうすればいいですか?
A. 内部の充填率(インフィル密度)を下げること、また強度の出やすいインフィルパターン(トライアングル・ハニカム・ジャイロイドなど)を選ぶことで軽量化できます。あわせて材料コストや造形時間も削減できますが、強度は低下するため要求荷重に応じた設定が必要です。
Q. 充填率は何%に設定すればいいですか?
A. 形状や組付けの確認だけが目的の試作であれば15〜20%程度で十分です。軽度な荷重がかかる機能試験部品では20〜30%、中〜高強度が必要な機能部品では40%以上、あるいは部分的にソリッド構造を組み合わせることを目安としてください。いずれも最終判断には試作による強度確認をおすすめします。
Q. インフィルとスパース構造は何が違いますか?
A. インフィルは3Dプリンターの内部充填設定そのものを指す用語で、密度(充填率)とパターン(形状)の2つの要素から構成されます。スパース構造は、充填率を100%未満に下げて内部に隙間を作った状態全般を指す呼び方で、インフィル設定によって実現される構造の一種です。
まとめ
3Dプリントによる部品の軽量化は、充填率とインフィルパターンという2つの設定を調整することで、材料コストや造形時間の削減とあわせて実現できます。トライアングル・ハニカム・ジャイロイドなど、パターンごとに強度の出方や造形時間の傾向は異なるため、部品の用途や要求荷重に応じた選定が重要です。
一方で、内部構造による軽量化は強度低下やタップ加工などの後加工の制約とトレードオフの関係にあります。ねじ穴周辺のローカルソリッド化など設計段階での工夫と組み合わせることで、軽量化と実用性を両立させることができます。
部品の軽量化のご相談は、3Dプリントの実績豊富なユモパーツにお任せください
充填率やインフィルパターンの選定は、部品の形状や要求される強度によって最適な組み合わせが大きく変わります。「どのくらいまで充填率を下げても強度が持つか」「タップ加工が必要な箇所をどう設計すべきか」といった判断は、実際の造形データを蓄積したパートナーに相談することで、より精度高く進めることができます。
YUMO PARTS(ユモパーツ)では、3Dプリントによる部品製作を1個から承っており、PEKKなどの高機能樹脂や金属材料を含む200材質以上の加工実績があります。充填率やインフィルパターンのご提案、軽量化の要求が3Dプリントでは難しい場合には、切削加工への変更や材料の見直しを含めたVE提案(加工方法相談)も可能です。見積もり回答は最短2時間。設計中で図面が手元にない段階からでも、お気軽にご相談ください。
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