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クロムモリブデン鋼(SCM)の切削加工 | 機械構造用合金鋼の特徴

クロムモリブデン鋼(SCM)の切削加工 | 機械構造用合金鋼の特徴

最終更新日:2026/9/4

本記事の要点

  1. クロムモリブデン鋼(SCM材)は、炭素鋼にクロムとモリブデンを添加し、焼入れ性や機械的強度、靭性を向上させた機械構造用合金鋼である。

  2. 炭素含有量によって特性が異なり、含有量の少ないSCM415は浸炭焼入れや溶接に適し、含有量の多いSCM435・SCM440などはより高い強度が要求される部品に適している。

  3. 高い強度を持つ反面、ステンレス鋼と比較して耐食性が低く錆が発生しやすいため、表面処理による防錆対策の検討が必要である。


クロムモリブデン鋼(SCM材)とは

クロムモリブデン鋼は、炭素鋼をベースにクロム(Cr:0.9%〜1.2%程度)とモリブデン(Mo:0.15%〜0.3%程度)を添加した機械構造用合金鋼で、JISでは「SCM」の記号で表されます。

熱処理により高い機械的強度と靭性を獲得できるため、一般的なS-C材(機械構造用炭素鋼)では強度が不足するような、高負荷のかかるギアやシャフト、高強度ボルトなどの機械部品に広く採用されています。

クロムモリブデン鋼の主な特徴

優れた強度と靭性

クロムとモリブデンの添加により鋼中の結晶構造が強化され、炭素鋼と比較して高い強度と靭性を兼ね備えています。また焼入れ性に優れているため、肉厚の大きい部品であっても内部まで均一な強度を得やすいという特徴があります。さらに、熱処理により耐摩耗性を向上させることが可能であり、歯車やシャフト、高強度ボルトなど、高い耐久性が求められる機械部品に広く採用されています。

焼入れ・焼戻しによって強度を調整できる

クロムモリブデン鋼は、焼入れ・焼戻しなどの熱処理によって、硬さや強度を用途に応じて調整できます。特にモリブデンやクロムの作用によって焼入れ性が高く、比較的大きな部品でも内部まで硬化させやすいです。必要な強度や靭性に合わせて熱処理条件を選択できるため、機械部品の要求性能に応じた材料設計がしやすいです。

耐摩耗性に優れる

クロムモリブデン鋼は、適切な熱処理によって高い硬度を付与できるため、摩耗に対して優れた性能を発揮します。特に、ギアやシャフト、ピンなど、部品同士が接触・摺動する用途では、摩耗による寸法変化や性能低下を抑えやすいです。強度と耐摩耗性を両立できることから、長期間の使用が求められる機械部品に適しています。

豊富な鋼種と入手性の高さ

価格は、クロムやモリブデンなどの合金元素を含むため炭素鋼よりも高価となりますが、ステンレス鋼やチタンといった特殊合金と比較するとレアメタルの含有量が少なく、比較的安価に抑えられます。

JIS規格では炭素含有量や添加元素、焼入れ性などにより多様な鋼種が分類されており、用途に応じて豊富な選択肢の中から最適な鋼種を選定できます。また、代表的な鋼種は流通量が多く入手性に優れる点も、設計上の大きなメリットです。

クロムモリブデン鋼の注意点

一般的な炭素鋼より材料コストが高い

クロムやモリブデンなどの合金元素を含むため、一般的な炭素鋼と比較すると材料価格が高くなる傾向があります。また、要求される強度や硬度によっては熱処理も必要となり、材料費だけでなく加工・熱処理を含めた総コストが高くなる場合もあります。そのため、必要な強度や耐摩耗性を見極め、材料選定を行うことが重要です。

耐食性が劣る

クロムを含むものの、ステンレス鋼のように高い耐食性を持つ材料ではないため、湿気や水分、腐食性のある環境では錆が発生する可能性があります。特に屋外や水分にさらされる用途では、防錆油や塗装、めっきなどの表面処理を検討する必要があります。

加工性、溶接性

切削加工性は比較的良好であるものの、強度が高くなるにつれて低下する傾向があります。溶接性については鋼種による差が大きく、比較的溶接しやすいものがある一方、硬化・割れ・脆化が生じやすい鋼種も存在するため、予熱や後熱処理など適切な熱処理を伴う溶接施工が求められます。

SCM材の種類と特性比較

SCM材は、末尾の数字が表す「炭素含有量」によって種類が分かれます。要求される強度や、後工程(表面硬化、溶接の有無など)に合わせて適切な材質を選定してください。

鋼種

炭素含有量(%)

特徴

代表的な用途

SCM415

0.13~0.18

・SCM材の中で炭素量が最も少なく、加工性が良好
・浸炭焼入れにより、表面は硬く内部は靭性を保つ
・高強度と耐久性が求められる機械部品に適する
・500℃前後の高温でも、強度が低下しにくい

小型歯車
ピン
シャフト

SCM418

0.16~0.21

・浸炭焼入れにより、表面は硬く内部は靭性を保つ
・高強度と耐久性が求められる機械部品に適する
・500℃前後の高温でも、強度が低下しにくい

小型歯車
ピン
シャフト

SCM420

0.18〜0.23

・浸炭焼入れにより、表面は硬く内部は靭性を保つ
・高強度と耐久性が求められる機械部品に適する
・500℃前後の高温でも、強度が低下しにくい

カム
ピストンピン
歯車

SCM425

0.23~0.28

・浸炭焼入れにより、表面は硬く内部は靭性を保つ
・高強度と耐久性が求められる機械部品に適する
・500℃前後の高温でも、強度が低下しにくい

歯車
シャフト

SCM430

0.28~0.33

・調質処理により、 高い強度と靭性を両立する
・焼入れ性に優れ、厚肉部品でも内部まで均一な強度を確保できる
・モリブデン添加により、焼戻し脆性が起こりにくい

シャフト
ボルト

SCM432

0.27~0.37

・調質処理により、高い強度と靭性を両立する
・焼入れ性に優れ、大径部品でも内部まで均一な強度を確保できる
・炭素量が多いため、溶接には不向き

シャフト
ボルト

SCM435

0.33〜0.38

・調質処理により、 高い強度と靭性を両立する
・焼入れ性に優れ、大径部品でも内部まで均一な強度を確保できる
・炭素量が多いため、溶接には不向き

強度ボルト
クランクシャフト

SCM440

0.38〜0.43

・調質処理により、高い強度と靭性を両立する
・焼入れ性に優れ、大径部品でも
内部まで均一な強度を確保できる
・炭素量が多いため、溶接には不向き

大型ギア
ジョイント
金型部品

SCM445

0.43〜0.48

・炭素量が多く、強靭鋼と呼ばれSCM系の中でも最高強度クラス
・SCM材の中で特に焼入れ性に優れる
・硬度が高くなる反面、切削加工性は低下する

ドライブシャフト
高強度が求められる特殊部品

SCM822

0.20~0.25

・「浸炭焼入れ」により、表面は硬く内部は靭性を保つ
・モリブデンの添加量が多く、焼入れ性に優れる
・大径・厚肉部品でも 内部まで安定した特性を得やすい
・溶接は可能だが、低温割れのリスクがある

大型の歯車
シャフト

※上記の炭素含有量および特性はJIS規格に基づく一般的な一例です。正確な内容については材料メーカーのミルシートや詳細な技術資料をご確認ください。


クロムモリブデン鋼(SCM材)の精密切削加工はユモパーツへお任せください

湯本電機ではSCM材の切削加工による特注・オーダーメイド部品の製作を1個から承ります。試作や本製作・量産、治具の製作に対応。S-C材加工など、幅広い金属加工の取り扱いがあります。比較のためのお見積り、材質選定のご相談もお気軽にお問い合わせください。

SCM材の切削加工事例

事業内容

執筆者:湯本電機株式会社

金属・樹脂の切削加工と3Dプリントを軸に、試作・開発段階の部品加工に特化したエンジニアリングパートナー。年間76,738枚を超える図面見積実績に基づき、樹脂から難削金属まで286種類以上の材質に対応。単なる受託加工に留まらず、蓄積された膨大な加工データを背景とした「コストダウン提案」や「加工法最適化」に強みを持つ。

最短2時間の高速見積もり回答体制を敷き、大手メーカーの設計・開発部門から、学生フォーミュラ・ロボコン等の次世代エンジニアまで、難易度の高いものづくりを技術面からバックアップしている。

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