ABSの切削加工 | 耐衝撃性に優れた汎用樹脂を扱う設計ポイント
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本記事の要点
ABSは、耐衝撃性や機械的強度、外観性、加工性などのバランスに優れた汎用樹脂で、家電や自動車など幅広い用途に使用される材料である。
一方で、紫外線による劣化や燃焼、有機溶剤によるひび割れなどに注意が必要で、使用環境に応じて性能を高めたグレードを選定することが重要である。
ABSには標準グレードのほか、カーボン繊維強化や高摺動、耐摩耗、難燃などのグレードがあり、求められる性能を考慮して選定する。
ABSとは
ABSは、アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)の3種類の成分からなる熱可塑性樹脂です。3成分を組み合わせることで、耐衝撃性や機械的強度、加工性、外観性などの特性をバランスよく備えています。汎用樹脂の中でも扱いやすく、家電製品や自動車部品、機械部品、筐体など幅広い用途で使用されています。また、用途に応じて耐熱性や難燃性、耐衝撃性などを高めたグレードもあります。
ABSの基本物性・特性
比重 | 耐熱温度 | 電気特性 | 寸法安定性 | 耐摩耗性 | 耐衝撃性 | すべり特性 |
|---|---|---|---|---|---|---|
1.04 | 70~100℃ | 絶縁 | ◎ | △ | ○ | △ |
※上記の数値・評価は代表的なグレードにおける目安であり、製品やグレード、使用環境によって異なります。材料選定の際は、メーカーの最新仕様をご確認ください。
ABSの特徴とメリット
高い機械的強度
汎用樹脂の中では比較的高い機械的強度を持ち、引張強度や曲げ強度、剛性のバランスに優れています。そのため、外装部品だけでなく、治具や機械部品など、一定の荷重がかかる部品にも使用できます。家電製品の筐体や自動車部品など、強度が求められる用途で広く採用されています。加工後も強度が安定している点も特徴です。
耐衝撃性
優れた耐衝撃性を持つことが大きな特徴です。特に、ABSに含まれるブタジエン成分が衝撃エネルギーを吸収することで、衝撃を受けた際に割れや破損が生じにくくなっています。そのため、落下や接触などによる衝撃が想定される機器の筐体やカバー、機械部品などに適しています。
外観性に優れる
表面を滑らかに仕上げやすく、成形品の外観性に優れる材料です。光沢のある表面からマットな質感まで、用途に応じてさまざまな外観に仕上げられます。また、着色性にも優れており、豊富な色から選択できる点も特徴です。そのため、機械内部の部品だけでなく、装置のカバーや筐体、家電製品など、外観が重視される部品にも広く使用されています。
コストパフォーマンスが良い
ABSは、耐衝撃性や機械的強度、加工性、外観性などの特性をバランスよく備えながら、比較的安価な材料です。必要な性能を確保しながら部品コストを低減できます。
ABS材質選定上の注意点
耐候性が低い
紫外線の影響を受けやすく、長期間屋外で使用すると、変色や光沢低下、表面の劣化などが生じる場合があります。紫外線によってブタジエン成分が劣化し、材料の強度や耐衝撃性が低下することがあります。屋外用途では、ABSより耐候性に優れるASAや、紫外線吸収剤の添加や表面へのコーティング、耐候性を付与したグレードを選択することで、劣化を抑えられます。
燃えやすい
可燃性の樹脂であり、火炎にさらされると燃焼します。また、燃焼時には煙や分解ガスが発生するため、火災安全性が求められる用途では注意が必要です。特に、電気・電子機器の筐体や装置部品などでは注意が必要です。難燃性が必要な場合は、難燃剤を添加した難燃グレードのABSを選択します。
特定の薬品に注意が必要
一定の耐薬品性を持ちますが、アセトンやベンゼンなどの有機溶剤に触れると、溶解や膨潤、ひび割れが発生しやすくなります。また、強酸や強アルカリ、油類などにも長期間接触すると劣化する場合があります。
ABSのグレード
ABSは、標準グレードの他に各種性能を強化したグレードがあります。
グレード | 主な特徴 | 用途例 |
|---|---|---|
標準グレード | ABS本来の優れた成形性、機械的強度、耐衝撃性、外観性などをバランスよく備えた汎用タイプ | 機械部品、筐体、カバー、家電製品、自動車内装部品など |
透明グレード | ABSの機械的特性を維持しながら、透明性を持たせたタイプ | 透明カバー、ケース、表示部品、光学関連部品など |
カーボン繊維強化グレード | カーボン繊維を配合により強度・剛性や寸法安定性を高めたタイプ | 機械構造部品、治具、ロボット部品、軽量化が求められる部品など |
耐摩耗グレード | フィラー配合や表面硬度向上により摩耗・傷に強く、摺動部での長期使用に適したタイプ | ギア、ベアリング、ローラー、ガイド部品、軸受部品など |
高摺動グレード | PTFEやシリコンオイル等の潤滑剤配合により摩擦係数を低減したタイプ | ギア、スライダー、摺動ガイドなど |
難燃グレード | 難燃剤添加によりUL94等の難燃規格に適合するタイプ | 電気・電子部品、電装部品、制御機器の筐体、コネクターなど |
医療用グレード | 医療機器での使用を想定し、衛生性や耐薬品性、滅菌への適合性などを考慮して設計されたタイプ | 医療機器部品、診断機器部品、医療用ケース、ハウジングなど |
ABSとPC(ポリカーボネート)の比較
ABSとPCは、どちらも機械部品や筐体などに幅広く使用される樹脂です。
項目 | ABS | PC |
|---|---|---|
常用温度・耐熱性 | 70~100℃程度 | 120~130℃程度 |
耐衝撃性 | 優れている | 非常に優れている |
耐薬品性 | ケトンやエステルなど有機溶剤、強酸に弱い | アルカリ性の薬剤・溶剤に弱い |
耐候性 | 紫外線や日光に長時間さらされると、変色・劣化しやすい | 紫外線や日光に長時間さらされると、変色・劣化しやすい |
透明性 | 透明グレードでも完全なクリアではなく、若干の色味がある | 透明性に優れ、クリアな外観が得られる |
可燃性 | 一般的なABSは燃焼する | ABSより燃えにくく、難燃性に優れる |
特徴 | 耐衝撃性、強度、加工性、外観性などのバランスに優れる | 耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れる |
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