ベークライトの切削加工 | 熱硬化性積層板の精密切削加工
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本記事の要点
ベークライトは、機械的強度・耐熱性・電気絶縁性を兼ね備え、電気・電子部品や機械部品など、幅広い用途で活用される熱硬化性樹脂である。
比較的低コストで導入しやすい一方、吸湿による特性変化や紫外線による劣化、衝撃による割れに注意する必要がある。
紙・布・ガラスを基材とした種類に加え、難燃性や帯電防止・静電気拡散性などを付与したグレードがあり用途に応じて選択できる。
ベークライトとは
ベークライトは、フェノール樹脂を紙や布、ガラス繊維などの基材に含浸させ、積層・硬化して作られる熱硬化性樹脂材料です。優れた機械的強度や電気絶縁性、耐熱性を持つことから、電気・電子部品や機械部品などに幅広く使用されています。基材の種類によって紙ベークライトや布ベークライト、ガラスフェノールなどに分類され、用途に応じて難燃性や帯電防止性を付与したグレードもあります。
ベークライトの基本物性・特性
比重 | 耐熱温度 | 電気特性 | 寸法安定性 | 耐摩耗性 | 耐衝撃性 | すべり特性 |
|---|---|---|---|---|---|---|
1.4 | -50~130℃ | 絶縁 | ○ | △ | × | × |
※上記の数値・評価は代表的なグレードにおける目安であり、製品やグレード、使用環境によって異なります。材料選定の際は、メーカーの最新仕様をご確認ください。
ベークライトの特徴とメリット
機械的強度
ベークライトは熱硬化性樹脂の中でも特に高い機械的強度を持つ材料です。硬度が高く、圧縮強度や曲げ強度に優れているため、荷重がかかる部品にも適しています。また、成形後の寸法安定性が高く、経年による変形が起こりにくいことも特長です。歯車やベアリング、電気機器の構造部品など、強度と精度が求められる分野で採用されています。
機械的強度は、外部から加えられた圧縮や引張など物理的な力に対して物質が持つ耐久力(変形や破壊の程度)のことを指し、大きく「引張強度」「衝撃強度」「曲げ強度」の3つに分類されます。
引張強度(単位:N/mm2)
ベークライトの引張強度は約65N/mm^2です。引張強度とは、材料を引張り破断するまでに生じた力から求められる強度のことです。N/mm^2(ニュートンパー平方ミリメートル)は、1mm^2(1平方ミリメートル)あたり何N(ニュートン)の力が加わったかを表す単位です。
1Nは地球上でリンゴ1個分(約100gの物体)を受け止めた時に感じる圧力なので、ベークライトの引張強度65N/mm^2は理論上、1mm^2の範囲においてリンゴ65個を受け止めたのと同等の引張まで耐えることができる強度と言えます。
比較として他の材質の引張強度を3つ挙げます。PVCの引張強度が56N/mm^2、PCが62N/mm^2です。引張強度においては紙ベークライトが布ベークライトよりやや優れています。
なお、引張強度を表す単位は他に「MPa(メガパスカル)」もありますが値はN/mm^2と同じです。また「kgf/mm²(キログラムフォースパー平方ミリメートル)」で表されることもありますが、1kgf/mm²≒9.8N/mm^2と換算できます。
特に布ベークは紙ベーク以上に高い強度を誇るため、強度が必要な用途で重宝されることが多いです。ただし、ベークライトは積層構造であるため、層に垂直な方向の力には強いですが並行方向(横方向)の力には比較的弱いという特徴があります。
衝撃強度(アイゾット衝撃強度、単位:J/m)
紙ベークライトのアイゾット衝撃強さは21~40J/m、布ベークライトは50~100J/mです。
アイゾット衝撃強度は「J/m」という単位で表されます。この衝撃強度の試験方法は、材料の試験片を片端だけ固定し、反対側をノッチ(切り込み)が付いた方向から振り子型ハンマーで打ち込み、破壊させたときの衝撃値を測定します。
比較としてPPのアイゾット衝撃強度が30J/m、MCナイロンが50J/m、POMが63J/mです。布ベークライトは50~100J/mと、他のエンジニアリングプラスチックと比較しても高い衝撃強度を持つことが分かります。
曲げ強度 (単位:N/mm2)
曲げ強度とは、曲げ試験において試験片が破壊されるまでに要した最大曲げ応力です。つまり、曲げる力に対してどの程度耐えうるかを示す指標です。
ベークライトの曲げ強度は最大195N/mm^2程度です。POMの曲げ強度が88N/mm^2、MCナイロンが110N/mm^2、PTFEは180N/mm^2なので、ベークライトはこれらの材質より高い曲げ強度を持つと言えます。
耐熱性
熱硬化性樹脂であるため、加熱しても軟化や再溶融が起こらず、高温環境下でも安定した性能を維持できます。熱による寸法変化を抑えたい部品や治具に適しています。
絶縁性
優れた電気絶縁性を持つ素材であり、電子・電気機器の絶縁材料として使用できます。絶縁スペーサーや端子台、電気・電子機器の絶縁部品など、導電を防ぐ必要がある用途に適しています。
POMやエポキシガラスも同程度の電気抵抗率です。PEEKやPBIのようなスーパーエンジニアリングプラスチックは、ベークライトよりもさらに高い電気抵抗率を示します。しかし、ベークライトは絶縁体として十分に用途を満たすと言え、 コストメリットの観点からも絶縁体として優れた材質として挙げることができます。
耐薬品性
酸やアルカリ、油類などに対して比較的優れた耐薬品性を持つ材料です。ただし、薬品の種類や濃度、温度、接触時間によっては劣化する場合があります。ベークライトは原料の生成時にアルカリ触媒による縮合反応が必要であるため、空気中のアルカリ成分(塩基)と相溶性が高い状態です。
その結果、水酸化物イオンOH-の発生を伴う化学反応が進むため、アルカリへの耐性が低い材質となります。強酸・強アルカリや特定の有機溶剤に接触する用途では、使用条件に応じた材料選定が必要です。
低コスト
PEEKなどの高機能エンジニアリングプラスチックと比較して材料コストを抑えやすい材料です。機械的強度や耐熱性、電気絶縁性などをバランスよく備えているため、必要な性能を確保しながら部品コストを抑えたい場合に適しています。また、成形性に優れているため大量生産にも適しており、金型を用いた射出成形などにより効率的に部品を生産できます。
ベークライト材料選定上の注意点
吸水・吸湿しやすい
吸水・吸湿性があり、湿気を含むことで寸法や電気的特性が変化する場合があります。また、吸水によって内部に応力が生じ、長期的には強度低下やひび割れの原因となる場合もあります。湿度の高い環境や屋外での使用においては、防湿対策やコーティング処理を施すなど、吸水を抑える工夫が求められることがあります。
耐候性が低い
紫外線の影響で表面が変色したり、微細なひび割れが生じたりすることがあります。そのため、屋外での長期使用を前提とする用途には不向きで、使用する場合は塗装やコーティングによる保護、あるいは耐候性に優れた他素材との使い分けが必要になります。
変色の原因はベークライトの製造工程にあります。原料の生成にアルカリ触媒を用いるため、空気中のアルカリ成分(塩基)と相溶性が高くなります。その結果として化学反応が進みやすく変色につながります。
経年による変色を避けたい場合は、変色がほとんど無い黒ベークライトをおすすめします。なお、変色しても物性上の劣化は無く、むしろ変色するというベークライトの特徴を逆手に取ってピアノの鍵盤をはじめとした楽器類や、コップの取手など家具類に多く採用される例もあります。
これは赤褐色に変色することで、アンティークな高級家具の色調を再現することができるためです。家具に使用されることが多い木材は外観の変化だけでなく物性上の劣化も避けられませんが、ベークライトであればそうした心配がありません。
衝撃に弱い
硬く剛性が高い一方で、靭性が低く、強い衝撃や急激な荷重が加わると割れや欠けが生じる場合があります。そのため、衝撃荷重がかかる用途では注意が必要です。耐衝撃性を重視する場合は、紙ベークライトよりも耐衝撃性に優れる布ベークライトを選択する方法があります。
摩耗しやすい
ベークライトの耐摩耗性は高くはなく、比較的摩耗しやすい材質です。耐摩耗性とは摩擦や研磨など機械的動作による摩擦面の消耗を抑止する性能を指し、駆動部品やベアリングなど優れた耐摩耗性が求められる場合は、PTFEやMCナイロンなどの材質が適当な選択肢になります。
上記の材質と比較するとベークライトは摩耗しやすく、それは切断、切削加工時に非常に小さな切り粉が出やすいことからも想像できます。
また、紙ベークライトに比べて、布ベークライトはより高い強度と耐摩耗性を発揮します。紙ベークライトは紙に原料を含浸させるのに対し、布ベークライトは布に原料を含浸させます。紙に比べて布の方が強度に優れるため、必然的に布ベークライトの方が高い強度と耐摩耗性を持つことになります。
向きによる強度の差
ベークライトは、紙や布などの基材にフェノール樹脂を含浸して積層した材料であるため、積層方向によって耐衝撃性に大きな差が生じます。積層目に垂直方向に衝撃を加えたアイゾット衝撃強さは0.0039J/m、積層目に並行方向だと21~40J/mです。積層面に対して垂直方向から力が加わる場合は比較的強い一方、積層面と平行方向に力が加わる場合は層間で剥離や破損が起こりやすくなります。
そのため、荷重が加わる方向と材料の積層方向に注意する必要があります。特にブロック形状に近くてリピート品の部品製作の場合は図面上で積層方向の指定などの積層方向の違いによる品質の差を防ぐ対処が必要です。
ベークライトの種類
基材による分類
基材によって大きく紙ベークライトと布ベークライトに分類されます。紙ベークライトは比較的安価で加工性や電気絶縁性に優れています。布ベークライトは機械的強度や耐衝撃性に優れる点が特徴です。一般に布ベークライトの方が材料費は高くなるため、コストや電気絶縁性を重視する場合は紙ベークライト、より高い機械的強度が求められる場合は布ベークライトというように、用途に応じて使い分けます。
種類 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
紙ベークライト | 紙を基材としてフェノール樹脂を含浸・積層して硬化させた材料。比較的安価で加工性に優れており、電気絶縁性と機械的強度のバランスに優れている。 | 絶縁板、端子台、スペーサー、機械部品 |
細糸布ベークライト | 細糸布を基材としてフェノール樹脂を含浸・積層した材料。表面が緻密で滑らかなため、切削面がきれいに仕上がる。 | ギヤ、軸受、ローラー、精密機械部品 |
太糸布ベークライト | 太糸布を基材としてフェノール樹脂を含浸・積層した材料。繊維が太く、機械的強度や耐衝撃性が高いため、大きな荷重に耐えられる。表面はやや粗い。 | ギヤ、軸受、ローラー、機械部品 |
ガラス布基材ベークライト | ガラス布を基材としてフェノール樹脂を含浸・積層した材料。機械的強度や耐熱性、寸法安定性に優れ、過酷な環境で使用する部品に適している。 | 絶縁部品、機械部品、電気・電子部品 |
機能・特性による分類
種類 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
難燃グレード | 難燃剤を添加したグレードで、燃焼に対する安全性が求められる用途に適する。通常グレードより高価だが、他の難燃性樹脂材料と比較すると安価。 | 電気・電子部品、絶縁部品 |
帯電防止・静電気拡散グレード | 静電気の蓄積を抑え、電荷を徐々に逃がす特性を持つ。表面のみ帯電防止性能が備わった製品と、全ての層に帯電防止性能が加わった製品がある。 | 半導体関連設備、電子部品、搬送部品 |
コールド材 | 材料の配合を調整して柔軟性を持たせたベークライト。常温での打ち抜き加工性に優れている。 | 電気絶縁部品、打ち抜き部品 |
色による分類
種類 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
黒ベークライト | 黒色に着色されたベークライト。通常のベークライトと異なるのは外観のみで、経年劣化による変色は目立ちにくくなる。受注生産となる場合が多い。 | 絶縁部品、機械部品、外観が重視される部品 |
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