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ポリカーボネートの切削加工 | 耐衝撃性に優れた透明樹脂の精密切削加工

ポリカーボネートの切削加工 | 耐衝撃性に優れた透明樹脂の精密切削加工

最終更新日:2026/9/28

本記事の要点

  1. ポリカーボネートは透明樹脂で最高水準の耐衝撃性を持ち、連続使用温度約120℃と低吸水という特性から、透明性と実用強度を両立できる数少ない切削材料である。

  2. 切削自体は容易だが、加工時の摩擦熱が被削材内部に残留応力を残し、これが後工程での薬品接触や締結時のケミカルクラックの起点となることがある。

  3. 標準グレードは紫外線で黄変し、切削面は必ず白濁する。屋外用途・光学用途・外観部品では、材料グレードと後加工をセットで選定しなければ要求を満たせない。


ポリカーボネート(PC)は、透明なのに割れないという、使い勝手のよい特性を持つエンジニアリングプラスチックです。一方で切削部品として使う場合、「加工後しばらくして割れた」「透明な部品のはずが白く濁って届いた」といったトラブルが起こりがちです。いずれもPCの材質特性を踏まえれば設計・加工条件の作り込みで防げるものです。本記事では基礎物性から切削加工特有の現場課題までを切削工場の視点で解説します。

ポリカーボネート(PC)とは

ポリカーボネート(Polycarbonate、略称PC)は、ビスフェノールAを主原料とし、分子鎖の結合部がすべてカーボネート基(-O-(C=O)-O-)で構成される熱可塑性樹脂です。PA(ポリアミド)やPOM(ポリアセタール)と並ぶ5大エンジニアリングプラスチックの一つです。

非晶性樹脂であるため成形収縮率が小さく、板材・丸棒からの切削加工との相性も良好です。板材は厚さ1〜100mm程度、丸棒はφ3〜200mm程度まで流通しており、削り出し用途を想定した厚板グレードも供給されています。

ポリカーボネートの基本物性と物性値

比重

耐熱温度

電気特性

寸法安定性

耐摩耗性

耐衝撃性

すべり特性

1.16

-40~120℃

絶縁

○

○

○

△

項目

単位

試験法

代表値

比重

-

JIS K7112

1.16

引張降伏応力

MPa

JIS K7161

58〜68

引張破壊時呼びひずみ

%

JIS K7161

約90

引張弾性率

MPa

JIS K7161

2,250〜2,400

曲げ応力

MPa

JIS K7171

約91

曲げ弾性率

MPa

JIS K7171

約2,300

シャルピー衝撃値(Vノッチ付)

kJ/m²

JIS K7111

約84(厚さ3mm)

ロックウェル硬度

-

JIS K7202

M67〜M78/R118〜R125

荷重たわみ温度(1.8MPa)

℃

JIS K7191

約135〜140

ビカット軟化温度

℃

JIS K7206

約150

ガラス転移温度(Tg)

℃

-

約150

連続使用温度

℃

-

約120

脆化温度

℃

ASTM D746

−100以下

線膨張係数

×10⁻⁵/℃

-

6.5〜7.0

熱伝導率

W/(m・K)

-

0.19

吸水率(23℃水中・7日)

%

-

約0.4

平衡吸湿量(相対湿度52%)

%

-

約0.16

全光線透過率

%

JIS K7361

88〜90(厚さ3mm)

屈折率

-

ASTM D542

1.587

体積抵抗率

Ω・cm

-

2〜5×10¹⁶

絶縁破壊電圧

kV/mm

ASTM D149

31〜33(厚さ1mm)

酸素指数

-

ASTM D2863

26

※上記は一般グレード(押出板)における代表値の一例であり、メーカー・グレード・板厚・試験片形状によって変動します。特に衝撃値は板厚の影響が大きく、PCでは厚さ4〜5mm付近を境に延性破壊から脆性破壊へ遷移することが知られています。実際の設計・材質選定にあたっては、必ず採用予定メーカーの最新版物性表で数値をご確認ください。

ポリカーボネートの特徴とメリット

透明樹脂で最高水準の耐衝撃性

ポリカーボネートが切削材料として選ばれる最大の理由が耐衝撃性です。アイゾット衝撃値(ノッチ付)で比較すると、アクリルが16〜22J/m程度であるのに対し、ポリカーボネートは640〜870J/m程度と、おおよそ30〜50倍の値を示します。

破壊時に破片となって飛散するアクリルに対し、ポリカーボネートは降伏後に大きく伸びてから破断します。ノッチなしのアイゾット試験では破断せず折れ曲がるだけ、という挙動を示すこともあり、この破壊時の安全性高さが防護カバーや安全部材で重視されます。

ガラスに近い透明性

厚さ3mmでの全光線透過率は88〜90%程度と、板ガラスに匹敵する透明性を持ちます。屈折率は1.587と高く、レンズや導光板などの光学部品にも用いられます。透明度そのものはアクリル(約92〜93%)の方が高いですが、実用上十分な視認性が確保できます。そのため、「透明性は必要だが、割れては困る」という用途ではポリカーボネートが選定されます。

−40〜120℃の広い使用温度域

荷重たわみ温度が約135〜140℃と熱可塑性樹脂の中では高い部類に入り、連続使用温度は約120℃です。一方で脆化温度は−100℃以下と低温にも強く、実用上は−40〜120℃の広い範囲で使用できます。

透明樹脂で耐熱性が高い材質は限られており、アクリル(連続使用温度70〜80℃程度)では変形・白化してしまう温度域でも使用できる点は、流体の可視化治具や機器の点検窓などで大きな利点となります。

寸法安定性に優れる

非晶性樹脂で成形収縮率が小さく、吸水率も低いため、寸法安定性に優れます。吸水による寸法変化が問題になりやすいMCナイロンなどと比べ、湿度変動のある環境でも寸法を保ちやすい材質です。ただし、完全に吸水しないわけではないので、曲げ加工や溶着加工を併用する場合は加熱時の発泡による影響を防ぐために予備乾燥の工程が必要になります。

ポリカーボネートが選ばれる部品

ポリカーボネートは透明性と耐衝撃性の両立が要求される部品で採用されます。代表的な例は以下のとおりです。

分野

採用例

保護・安全部材

ヘルメットのシールド、機動隊の盾、バイクの風防、機械の安全カバー

光学部品

カメラレンズ、メガネレンズ、導光板、光ディスク基板

建築・土木

カーポートやアーケードの屋根材、高速道路の防音板、学校・保育施設のパーテーション

電気・電子

絶縁部品、機器筐体、スマートフォンのボディ・ケース

機器部品

医療機器部品、食品機器部品、自動車のヘッドランプ

切削加工での引き合いが特に多いのは、「1個から必要で、透明かつ割れては困る」という条件が重なる部品です。試作段階の安全カバーや点検窓、流体挙動を確認する可視化治具、光学系の評価治具などが典型例で、いずれも量産前の検証フェーズで発生する少量・短納期の案件です。

ポリカーボネートのグレード一覧

ポリカーボネートには標準グレードのほか、特定の弱点を補強した各種グレードが存在します。切削加工品では「どのグレードの素材から削り出すか」が最終性能を決めるため、設計要件に応じた選定が重要です。

グレード

特徴

主な用途例

標準グレード

透明でバランスの取れた基本物性

カバー、治具、絶縁部品

耐候グレード

表面にUV吸収剤入り層を積層し黄変を抑制

屋外パネル、屋根材

超耐候グレード

材料全体に耐候性を付与

屋外で使用する切削加工部品

難燃グレード

UL94 V-0/V-2相当の燃焼クラスに対応

電気・電子機器の筐体、絶縁部品

ガラス繊維強化グレード

剛性・寸法安定性を強化(透明性は失われる)

高剛性が求められる構造部品

制電・帯電防止グレード

表面抵抗率を10⁶〜10⁸Ω/□程度まで低減

電子部品トレー、クリーン環境の治具

表面硬化(ハードコート)グレード

耐擦傷性を大幅に改善

視認窓、ディスプレイカバー

食品衛生法適合グレード

食品用途の規格に対応

食品機器部品

※グレードの呼称・ラインナップはメーカーによって異なります。また、耐候層や表面硬化層は表面に設けられる構成であるため、その面を切削すると当該性能が損なわれる可能性があります。ガラス繊維強化グレードは工具摩耗が早く、透明性も失われる点にも留意が必要です。

ポリカーボネート材質選定上の注意点

標準グレードの耐候性は優れているとは言い切れない

ポリカーボネートは耐候性に優れると紹介されることが多い材質ですが、切削加工品の設計においては、この理解には注意が必要です。ポリカーボネートそのものは紫外線によって分子構造が変化し、黄変・劣化します。屋外用途で使われるポリカーボネート板が長期間性能を保てるのは、表面にUV吸収剤を添加した耐候層を積層した耐候グレードだからです。

表面に耐候層を設けたタイプの板材は、その面を削り込むと耐候性能が損なわれる可能性があります。屋外で長期使用する切削部品には、UV吸収剤を材料全体に練り込んだ超耐候グレードの選定、または加工後の表面処理を検討してください。

表面に傷がつきやすい

ポリカーボネートの弱点として代表的なのが表面硬度の低さです。同一条件で測定された比較の一例を示します。「耐衝撃性が高い=丈夫」というイメージとは裏腹に、表面はアクリルよりも傷つきやすい材質です。

ウエスやブラシでの乾拭きでも傷が入り、透明性が低下します。外観部品や繰り返し清掃して使われる部品では、表面硬化グレードの採用や保護フィルムの運用を前提とした設計が必要です。

透明樹脂の中では高価

ポリカーボネートは透明性の高い樹脂の中では比較的高価な部類に入ります。「透明であればよい」という要件であれば、アクリルやPET、塩ビなどのほうがコスト面で有利です。耐衝撃性・耐熱性のどちらも不要な用途でポリカーボネートを選定すると、オーバースペックによるコスト増につながります。


ポリカーボネートの切削加工はユモパーツにお任せください

YUMO PARTS(ユモパーツ)はポリカーボネートをはじめとした樹脂切削加工による図面加工品を1個から製作するパーツメーカーです。特注部品の製作を1個から承ります。PMMAやPOMなど多材質の加工実績を活かし、比較検のためのお見積りや、グレード選定・代替材質のご相談にも対応します。見積もり回答は最短2時間。設計中で図面が手元にない段階からも、お気軽にお問い合わせください。

YUMO PARTS(ユモパーツ)のポリカーボネート切削加工事例

事業内容

執筆者:湯本電機株式会社

金属・樹脂の切削加工と3Dプリントを軸に、試作・開発段階の部品加工に特化したエンジニアリングパートナー。年間76,738枚を超える図面見積実績に基づき、樹脂から難削金属まで286種類以上の材質に対応。単なる受託加工に留まらず、蓄積された膨大な加工データを背景とした「コストダウン提案」や「加工法最適化」に強みを持つ。

最短2時間の高速見積もり回答体制を敷き、大手メーカーの設計・開発部門から、学生フォーミュラ・ロボコン等の次世代エンジニアまで、難易度の高いものづくりを技術面からバックアップしている。

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